2024年4月20日(土)

WEDGE REPORT

2016年5月30日

 IT企業の受付のようにタブレットにタッチして、約束の時間と人物を選択する。出迎えてくれたのは、シニア・プログラム・ディレクターの杉本直樹氏だ。日本の企業で働いた後、米国でMBAを取得し、ベンチャーキャピタリストとしての経験も持っている。

HSVL(ホンダ・シリコンバレー・ラボ)の杉本直樹シニア・プログラム・ディレクター(撮影:生津勝隆)

6兆円のアメリカ全体のベンチャー投資のうち
半分がシリコンバレーに投じられる

 「シリコンバレーにホンダが拠点を構える意味は、アメリカの、いえ、世界のベンチャー投資のど真ん中だからです。約6兆円のアメリカ全体のベンチャー投資のうち、半分がシリコンバレーに投じられていて、日々、起業家たちがスタートアップを立ち上げています。ニューヨークやボストンなどと比べても、圧倒的な規模を誇ります。2014年の日本のベンチャー投資は約1400億円で、その約半分が日本国内への投資ですが、シリコンバレーと比べると約40倍もの差になります。こうして生まれたスタートアップのほんの一部が大手に買収されたり、上場して大企業へ成長して成功するのです。」と、杉本さんは言う。

 シリコンバレー周辺にはスタンフォード、UCバークレーといったIT分野に強い大学があり、東海岸の有名校であるMITやハーバードからも起業家やアントレプレナーたちが渡ってきて、この地で投資を集めてベンチャー企業を起こしている。

 日本にいながら、数十億ドルの投資などというニュースを耳にしても、遠くの世界で起こっている出来事のように感じるが、ここシリコンバレーではそれが日常なのだ。HSVLでは、これぞと思うスタートアップと様々な形で協業しているのだが、自動車メーカーならではの方針がユニークだ。

 「一般的なベンチャーキャピタルと、HSVLが行うオープンイノベーションとの違いは、HSVLはベンチャー投資でお金儲けするのではなく、スタートアップやIT企業の持つ革新的な技術や新しいビジネスモデルにいち早くリーチアウトして一緒に協創することで、ホンダの製品やサービスを革新的に良くすることを目的にしています」と、杉本さんは話す。


新着記事

»もっと見る