2024年12月22日(日)

WEDGE REPORT

2016年5月31日

【北朝鮮の弾道ミサイル能力を読み解く4つのポイント】
1. 日本にとってまず脅威となるのは、技術も運用も確立済みのノドンやスカッドER
2. 現在、日本にとって迎撃しにくいのはムスダン。ただし、4月の発射実験は3連続で失敗?
3. ムスダンの発射実験失敗で米国本土に届く弾道ミサイルの開発も揺らぐ可能性
4. 北朝鮮が発射実験に成功したとする潜水艦発射弾道ミサイルは将来の日本にとって大きな脅威

 36年ぶりに開かれた北朝鮮の朝鮮労働党大会で、新設された「党委員長」に就任した金正恩氏は、過去4回の核実験を背景に「核強国の地位に堂々と上がっただけに、それ相応の対外関係を発展させていかなければならない」(党中央委員会活動報告5月7日)と核保有の意義を強調した。だが、「核」は、敵地への運搬ができなければ、「核兵器」にならない。

4月23日に実施された潜水艦発射弾道ミサイルの発射試験は、日本にとって大きな意味を持つ(AP/Aflo)

 では、北朝鮮が今年に入って次々打ち上げた様々な弾道ミサイルはその役割を担えるだろうか。まず、党大会開会の辞で、金正恩氏が「わが軍隊と人民は……初の水素爆弾実験と地球観測衛星『光明星4号』の打ち上げを成功させ……」と意義を強調した、「銀河」。2月7日、衛星の軌道投入に使用された「銀河」は、防衛省では「テポドン2派生型」と呼ばれ、弾頭を大気圏に再突入できる技術力があれば、射程は1万2000kmと米本土もカバーし、〝事実上の弾道ミサイル〟となる。

 金正恩氏が2カ月前、「核攻撃能力の信頼性をより高めるため、早期に核弾頭の爆発試験と、核弾頭搭載が可能な様々な弾道ミサイルの発射実験を行うと表明し、準備を命じ」(3月15日付朝鮮中央通信)ていたが、その言葉に沿う形で発射されたのは移動式中距離弾道ミサイル、ムスダンだ。4月15日に1回、同28日には2回と、計3回発射されたが、韓国軍はいずれも失敗と評価している。

 さらに、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM/KN-11)発射試験(4月23日)も実施しているが、約30km飛んだところで爆発したとして、韓国軍は、飛翔が短く失敗と見ている。北朝鮮メディアが伝える党大会の金正恩氏の発言に、ムスダンやSLBMを示唆する言葉はなかった。

 北朝鮮の保有する弾道ミサイルは大まかに4系統に分かれる。

 まずは〝おなじみ〟のノドンに至るスカッド系統だ。1981年にエジプトから入手した旧ソ連の液体推進のスカッドB弾道ミサイルのコピー及び発展型で、別々のタンクに入った液体の燃料と酸化剤をエンジンで燃やし、噴射する。全長を長くして、推進剤を増やし、弾頭も小型化して、射程を1000kmに延伸したスカッドER、スカッドBの直径、全長ともに1・5倍に拡大、エンジンも大型化した射程1300kmのノドンなどがある。ノドンなら東京が射程に入る。


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