地域再生のキーワード

2017年4月1日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年東京生まれ。1987年早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年3月末で退社、独立。現在、経済政策を中心に政・財・官を幅広く取材、各種メディアに執筆するほか、講演やテレビ出演、勉強会の主宰など幅広く活躍している。オフィシャルHP(http://isoyamatomoyuki.com/)

著書に『2022年、「働き方」はこうなる』(PHPビジネス新書)、『理と情の狭間 大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP)、『国際会計基準戦争 完結編』(日系BP)、『ブランド王国スイスの秘密』(日経BP)など。共著に『オリンパス症候群 自壊する「日本型」株式会社』(平凡社)、『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。

早稲田大学政治経済学術院(大学院)非常勤講師、上智大学非常勤講師。ボーイスカウト日本連盟理事。静岡県ふじのくにづくりリーディングアドバイザーも務める。

日経ビジネスオンライン(日経BP)、現代ビジネス(講談社)、フォーサイト(新潮社)、月刊 WEDGE(ウェッジ)、月刊 エルネオス(エルネオス出版)、フジサンケイビジネスアイ(産経新聞社)などに連載コラムなどを持ち、定期執筆している。

 神奈川県旧藤野町(現相模原市緑区)。東京から1時間半の場所は、多くのクリエイターたちを惹きつける創造の里だ。あるものをうまく活用するという自前主義が生きている。

東京都の西端にある高尾山を貫く小仏トンネルを抜けたところに芸術家や起業家といった人たちをひきつける町がある。神奈川県相模原市藤野地区。東京駅から藤野駅までJR中央線の快速で1時間半ほど。近からずといえど遠すぎず。自然がたっぷり残る山間の町に田舎暮らしを求めて移住してくる人が絶えないのだ。

左から髙槗靖典さん、中村賢一さん、植松紀世乃さん(笑花食堂)、上條理絵さん(藤野ライトハウス)

 そんな移住者たちから「ケンさん」「ケンちゃん」と慕われる人物がいる。中村賢一さん。藤野里山交流協議会会長の肩書を持つ。旧藤野町役場の職員だった頃から、藤野の町おこしに取り組んできた。

 移住してくる人たちは家探しから生活の立ち上げ、細々した問題解決まで、必ずと言ってよいほど中村さんの世話になる。もともとの住民と新参者をつなぐ「ハブ」のような役割を果たしている。

旧藤野町 中央線快速で東京から約1時間半で藤野駅に到着する。2007年に相模原市に編入され、10年に相模原市緑区となった

 全国各地、芸術家を集めて町おこしの起爆剤にしようと試みているところは少なくない。だが、藤野は年季が入っている。何せ、芸術で町おこしを始めたのは30年前にさかのぼるのだ。

 だが、芸術で町おこしをしようと考えたもともとのアイデアは住民から出たものではない。神奈川県が相模川の上流域の開発プランとして「藤野ふるさと芸術村構想」を打ち出したのがきっかけだ。いわば官主導の町おこしとしてスタートしたのである。

 だが、今はまったく違う。中村さんをはじめ、民間の人たちが知恵と工夫で様々なアイデアを実現させている。小さなブースを建てて芸術家たちにギャラリーとして貸し出す「ふじのアート・ヴィレッジ」、廃ホテルを再利用した手作りのアトリエ、自然農法の農園や農園レストラン、自立分散型エネルギーを目指す市民発電所「藤野電力」、地域通貨「よろづ(萬)屋」……。それぞれの創意工夫が新しいコミュニティーをはぐくんでいる。

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