2024年12月22日(日)

地域再生のキーワード

2017年4月1日

 神奈川県旧藤野町(現相模原市緑区)。東京から1時間半の場所は、多くのクリエイターたちを惹きつける創造の里だ。あるものをうまく活用するという自前主義が生きている。

東京都の西端にある高尾山を貫く小仏トンネルを抜けたところに芸術家や起業家といった人たちをひきつける町がある。神奈川県相模原市藤野地区。東京駅から藤野駅までJR中央線の快速で1時間半ほど。近からずといえど遠すぎず。自然がたっぷり残る山間の町に田舎暮らしを求めて移住してくる人が絶えないのだ。

左から髙槗靖典さん、中村賢一さん、植松紀世乃さん(笑花食堂)、上條理絵さん(藤野ライトハウス)

 そんな移住者たちから「ケンさん」「ケンちゃん」と慕われる人物がいる。中村賢一さん。藤野里山交流協議会会長の肩書を持つ。旧藤野町役場の職員だった頃から、藤野の町おこしに取り組んできた。

 移住してくる人たちは家探しから生活の立ち上げ、細々した問題解決まで、必ずと言ってよいほど中村さんの世話になる。もともとの住民と新参者をつなぐ「ハブ」のような役割を果たしている。

旧藤野町 中央線快速で東京から約1時間半で藤野駅に到着する。2007年に相模原市に編入され、10年に相模原市緑区となった

 全国各地、芸術家を集めて町おこしの起爆剤にしようと試みているところは少なくない。だが、藤野は年季が入っている。何せ、芸術で町おこしを始めたのは30年前にさかのぼるのだ。

 だが、芸術で町おこしをしようと考えたもともとのアイデアは住民から出たものではない。神奈川県が相模川の上流域の開発プランとして「藤野ふるさと芸術村構想」を打ち出したのがきっかけだ。いわば官主導の町おこしとしてスタートしたのである。

 だが、今はまったく違う。中村さんをはじめ、民間の人たちが知恵と工夫で様々なアイデアを実現させている。小さなブースを建てて芸術家たちにギャラリーとして貸し出す「ふじのアート・ヴィレッジ」、廃ホテルを再利用した手作りのアトリエ、自然農法の農園や農園レストラン、自立分散型エネルギーを目指す市民発電所「藤野電力」、地域通貨「よろづ(萬)屋」……。それぞれの創意工夫が新しいコミュニティーをはぐくんでいる。


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