地域通貨「よろづ屋」のマーク
センスの良い人たちを惹きつけているのは、自然や学校教育だけでなく、そこに面白い人たちが集まっているから。人が人を呼ぶ相乗効果が起きているわけだ。このコラムでも取り上げた徳島県神山町で起きている現象と同じである。しかも、藤野は東京まで1時間半。東京にビジネス拠点を持ち続けながら、田舎暮らしもできる。そんな立地も多くの「自由人」を引き寄せている。
髙槗さんはそんな人たちが加わるコミュニティー「トランジション藤野」の中心メンバーとしても活躍、地域通貨「よろづ屋」の運営にも携わる。「庭木の剪定を1000よろづでお願いします」といった具合にメーリングリストに投稿すると、誰かが「OK」という返事をする。「よろづ」というのは地域通貨の単位で、1よろづ=1円見当ということになっている。
仕事をした人の「よろづ通帳」に「庭木剪定(+)1000よろづ」、一方でやってもらった人の通帳には「(-)1000よろづ」と書き込み、相互にサインをして取引が終わる。町内の芸術家作品などの購入でも「よろづ」が使えるケースが多い。7年たった今では400人ほどが地域通貨を使う。
藤野にこない人たち
桑原敏勝さん、佐知子さん夫婦
神奈川県座間市で会社経営をする桑原敏勝さんも藤野の魅力に取りつかれたひとり。農業生産法人の藤野倶楽部を設立、お茶や有機野菜の生産販売に乗り出した。会員制の体験農園「安心農園」や農園レストラン「百笑の台所」を展開する。