地域再生のキーワード

2017年4月1日

»著者プロフィール
閉じる

磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

ジャーナリスト

千葉商科大学教授(4月から)。1987年日本経済新聞社に入社。フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務め、11年に独立。著書に『2022年、働き方はこうなる』(PHPビジネス新書)など。

 「実は藤野には芸術家を惹きつけてきた歴史もあるんです」と桑原さん。戦時中に藤田嗣治や佐藤敬といった画家たちが藤野に疎開していたのだという。そんな画家たちの絵が今でも旧家の蔵に眠っていたりする。桑原さんはそうした絵を買い取り、農園レストランのギャラリーに展示している。「もともと外から来る人にやさしい土地柄なのでしょう」と桑原さん。

農園レストラン「百笑の台所」

 

陶器を作る「アトリエ紡」の神坂幸恵さん

 藤野の町では、いたるところでイベントが開催されている。「藤野ぐるっと陶器市」のような町を挙げてのものもあるが、大半は住民の芸術家などが勝手に古民家などで展示会を開くのだ。

 取材に訪れた際に展示会を開いていた東川裕子さんは、パートナーで木工作家の藤崎均さんと共にミラノから藤野へ移り住んだ。「時間がゆっくり流れるところがいいですね」と藤野の魅力を語る。「それに人が温かいんです」と東川さん。グラフィックデザイナーとしての技量を、藤野のコミュニティーのパンフレットづくりに生かすなど、今ではすっかり藤野に無くてはならない存在になっている。

(写真左)ホテルの廃屋を再利用した手作りのアトリエ
(写真右)東川裕子さんとパートナーの藤崎均さん

 移住に力を貸す中村さんだが、藤野には絶対にこない人たちがいると言う。「大資本と暴力団。うんと稼ぎたかったら二駅東に行けば東京都です。身の丈に合った、多様な生き方を求める人たちしか集まってきません」。

 おカネを追いかける生活に飽きた本物の豊かさを求める人たちが集まって来る藤野は、今後も魅力を増していくに違いない。

(写真・生津勝隆 Masataka Namazu)
 

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

◆Wedge2016年7月号より

 

関連記事

新着記事

»もっと見る