2024年4月20日(土)

風の谷幼稚園 3歳から心を育てる

2010年1月21日

美緒子 「あのね、美緒子も翔太くんもはじめは全然跳べなかったけど、滑川先生が教えてくれた
から、それで頑張ったら跳べたんだよ。咲也香ちゃんも頑張れば跳べるよ」
瑞稀  「頑張って跳べるようになろうよ」
葉の佳  「咲也香ちゃんだって頑張れば絶対に跳べるよ」
しかし、咲也香ちゃんはうなずくことすらせず、次第に泣き声も増していきました。
そこでいよいよ先生の登場。
先生  「咲也香ちゃん、もういっぱい頑張ってるんだよね。でもなかなか跳べるようにならなくって
涙が出てきちゃうんだよね。もしかして咲也香ちゃん、何を頑張ればいいのかわからなく
なっちゃったんじゃない?」
咲也香  「(大きくうなずく)」
先生  「咲也香ちゃんも、頑張れば跳べるようになるってことはわかってると思うよ」

葉の佳  「わかった! あのさ、『こうしたらいいよ』っていうのをたっくさぁーん言っちゃって、わからなくなっちゃったんじゃない?」
先生  「そうかもしれないよね。じゃあ、どうやって教える?」
翔太  「1つずつ!」
美緒子  「そう! そしてできるようになったらもう1つずつ言う。それでいい? 咲也香ちゃん」
咲也香  「(涙を止めてうなずく)」
先生  「じゃあ、咲也香ちゃんは跳ぶときに腕が下で止まってるから、止めないで腕を後ろまで回してごらん」
こうして再び跳びはじめ、仲間たちはその1つの“頑張るところ”を見てあげていたのでした。
咲也香ちゃんへの“涙を止めて一緒にやろうよ”という子どもたちの一生懸命な思いは、たくさんの「頑張る」「頑張れ」「頑張ろう」という言葉に表れていました。子どもたちの仲間を思う気持ちが伝わってきます。
ケンパー組の子たちは、仲間に教えてあげようという気持ちが強くあります。でも、当の本人は、具体的な行為のわからない「頑張れ」が苦しかったのではないでしょうか。
なわとびという教材は行動に結びつく具体的な言葉をかけるのが難しいものです。だけど、その子の課題を具体的に見て取り適切な言葉がかけられるように子どもたちを育てたいと思っています。
鳥1組 学級通信 「おおばこ」より

 このエピソードからも伝わってくるように、子どもたちの仲間を想う気持ちは純粋そのものだ。もちろん、この気持ちがとても大切であることは言うまでもない。しかし、風の谷幼稚園では、幼児期にもう一段階高いレベルを子どもたちに求める。つまり、ただ自分の気持ちを「頑張れ」という言葉で伝えるだけでなく、具体的な頑張り方までを伝えられるようになることが大切な教育目標だ。

 「幼児期にそのようなことができるのか?」「そこまで求める必要があるのか?」こんな疑問の声が聞こえてきそうだが、できるということは事実が証明している。では、なぜ幼児期にこれを求めることが必要なのか?

 「仲間を思って“頑張れ”と言うことは大切ですが、“どう頑張ったらいいのか”がわからないと、かえってその言葉は相手を追い詰めることにもなりかねません。しかし、その頑張るべき箇所や方向性を示してもらえれば相手も受け入れやすく、問題も解決しやすくなります。さらに、そのプロセスを共有したことで本当の信頼感や心の通い合いが生まれていきます。その素晴らしさを経験させるためにも、子どもたちには具体的な言葉で気持ちを示せるように指導しているのです」(天野園長)


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