WEDGE REPORT

2016年8月15日

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 過激派組織「イスラム国」(IS)の終焉が見え始めた。本拠のシリアでは、トルコとの戦略的な交通の要衝、北部のマンジュビが陥落、第2の拠点化を狙った北アフリカ・リビアのシルトも制圧された。アフガニスタンでもIS指導者が米空爆で死亡した。追い詰められたISが欧州やアジアでテロを激化させる恐れが再び強まってきた。   

ISから解放された人々。イラク・キルクーク(GettyIMages)

黒マント焼却、あご髭そって祝福

 シリアのマンジュビは首都のラッカ北西約120キロに在る人口10万人の都市だ。トルコ国境まで北方へ約30キロのところにある。ISにとっては、もう一つの国境の町アルライとともに、トルコからの物資の搬入にとっては欠かせない重要な補給拠点だ。

 マンジュビはまた、外国人戦闘員のシリア出入国の拠点になってきた。世界各地から3万人以上の外国人がマンジュビを経由してラッカに入った。欧州のテロ作戦に出撃した戦闘員もこの地を通ってトルコに出国、パリやブリュッセルに潜入した。

 ISの支配するマンジュビに対し、6月から「シリア民主軍」(SDF)の攻撃が始まった。「シリア民主軍」はクルド人武装組織「人民防衛隊」(YPG)とシリア人の部族部隊からなり、数千人がマンジュビ攻略作戦に参加した。マンジュビから数キロ離れた仮設の司令部では米特殊部隊が作戦を支援した。

 米軍は作戦開始以来、マンジュビのIS拠点に100回を超える空爆を行った。多い時では空爆は1日20回以上にもなったという。この激戦でIS側は1000人以上が死亡、SDF側にも100人を超える戦死者が出た。

 激しく抵抗していたISは8月12日、遂に撤退を開始。バスや乗用車など約2000台の車両がマンジュビから北方のジャラブルス方面に逃走した。この際、IS戦闘員は住民らを“人間の盾”として一緒に連行したが、一部は米軍の攻撃で死亡した、という。

 ISが逃げ出したマンジュビはお祝いムードに包まれ、イスラム原理主義を信奉する象徴としてあご髭を強要されていた男たちが髭をそったり、ニカブという黒いマントで顔から全身を隠すよう強いられてきた女たちはニカブを脱ぎ捨て、火を付けて燃やした。

 ISにとってマンジュビの陥落は極めて大きな打撃であり、すでに始まっているSDFの首都ラッカ攻撃に弾みがつくことになった。ISはシリアの隣国のイラクでも先月、ISのイラクの最大拠点モスル南方のカイヤラ空軍基地を政府軍に制圧された。モスルへの攻撃も2、3カ月以内に開始される見通しだ。

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