WEDGE REPORT

2016年9月9日

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長内 厚 (おさない・あつし)

早稲田大学大学院経営管理研究科教授

ハーバード大学GSAS客員研究員。1997年、京都大学経済学部卒業後、ソニー入社。2007年に京都大学大学院経済学研究科ビジネス科学専攻博士後期課程修了後、研究者に転身。2016年より現職。

 日本企業が多数の部品を供給しているiPhone。アップルがくしゃみをすれば、日本企業は風邪をひく、そんな関係性にあると言えるが、そのアップルは深刻な病にかかりつつある─。

 米国時間の9月7日、アップルがiPhone7の発売をリリースし、防水機能や日本のおサイフケータイに対応するFeliCaチップ搭載が話題となっている。

 だが、iPhone発売でお祭り騒ぎをしているのは、もはや日本ぐらいかもしれない。著者が住むボストンなどアメリカ東海岸地域は、元々西海岸に比べるとアップル熱が高くないエリアである。アメリカの携帯電話市場において、ハイエンドのメイン商品がiPhoneからサムスンのGalaxy SシリーズやGalaxy Noteシリーズにシフトしてきていることは日本ではあまり知られていない。

減速傾向が明らかになってきたアップル(写真・REUTERS/AFLO)

主要マーケットで唯一伸びている日本

 市場調査会社IDCの今年7月の発表によると、2016年第2四半期のグローバル市場シェアは、アップル11・8%に対してサムスンは22・4%。サムスンの好調はハイエンドのGalaxy S7、S7 edgeが牽引しているという。ボストン近郊の家電販売店や携帯電話会社の直営店などで話を聞くと、主力はサムスン製であり、iPhoneも主力の一部ではあるが、かつてほどの勢いはないと話す。

 7月にはiPhoneの販売台数が対前年比で15%減少と報じられたが、やはりiPhoneは凋落してきているのだろうか。アップルの4~6月期の決算をみると、売り上げは420億ドル(約4・2兆円)で、対前年比15%減、営業利益も10億ドル(約1兆円)で同28%減と減収減益になっている。

 ただ、地域別の売り上げをみてみると、アメリカ11%減、欧州7%減、中国33%減と軒並み下がっているのに対し、日本のみ23%増と伸びている。カンターなどの調査でも、日本では依然としてiPhoneが50%以上の市場シェアを有していることを示しており、グローバル市場と日本市場を浮き彫りにしている。iPhone7でわざわざ日本仕様を出したことにも納得がいく。

迷走する有機ELの技術を上回ってしまった液晶

 今年8月、アップル日本法人は、昨年日本企業865社から300億ドル(約3兆円)以上の部品を仕入れたと発表したが、それだけiPhoneの動向は日本のエレクトロニクス産業に大きな影響力をもっているといえる。

 例えば、液晶は一部韓国メーカーも供給しているが、ほとんどがJDI(ジャパンディスプレイ)やシャープといった日本企業である。画質を重視した場合、まだ日本企業に優位性があるということだろう。

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