イノベーションの風を読む

2016年8月19日

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川手恭輔 (かわて・きょうすけ)

コンセプトデザイン・サイエンティスト

1990年代から、大手メーカーでインターネットサービスの企画・開発・運用を手がけ、自ら立案したグローバルなサービスを複数立ち上げた経験を持つ。その1つは、サービスのデザインでグッドデザイン賞を受賞した。コンピューターサイエンス関連の翻訳本も多数ある。

 ソニーは6月29日に開催した経営方針説明会で「ソニーブランドを冠したコンスーマーエレクトロニクス事業の復活」を宣言した。

 7月29日に発表された2016年度の業績見通しにおけるコンスーマーエレクトロニクス関連のセグメント(以下エレキ)の営業利益は、モバイル・コミュニケーションが50億円(-614億円)、イメージング・プロダクツ&ソリューションが220億円(693億円)、ホームエンターテイメント&サウンドが410億円(506億円) と、黒字を維持または達成できる見通しになっている(括弧内は2015年度実績)。しかし、このエレキの黒字化が、新たなイノベーションのジレンマを生み出している。

未来への布石?

iStock

 経営方針説明会では「未来への布石」として、シード・アクセラレーション・プログラム(SAP)やフューチャー・ラボ・プログラムなどを実施していると説明したが、そこで企画し開発した商品をクラウドファンディングに出品したり、ファースト・フライトという自社のクラウドファンディングを立ち上げたりもしている。

 それらの動きを見ていると、長期にわたるエレキの低迷で、ソニーらしさがなくなったと責め立てられた焦りのようなものを感じる。これらの取り組みから生まれたという文字盤の模様が変わる時計や、複数の機器の操作ボタンをカスタマイズできるリモコンや、バンド部分がウェアラブルデバイスになったアナログ時計などの製品を見ていると、2012年7月のハーバード・ビジネス・レビューに掲載された「ビッグアイデアの減少に歯止めをかける」というコラムのスタートアップ(ベンチャー企業)に関する次の言葉を思い出す。

 「起業のコストが劇的に下がり、まったく新しい層の起業家が会社を創ろうとしている。取るに足らない会社を始めようとする創業者は世界を変えたいとは思っていない」

 ソニーに求められている「らしさ」とは、ファッション雑貨の店で売っているような商品をつくることではなく、エレキ事業の真の復活を目指して、ウォークマンのようなビッグアイデアに挑戦することだろう。そもそも、なぜソニーのような大企業がスタートアップの真似事をしなければならないのだろうか。

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