風の谷幼稚園 3歳から心を育てる

2010年2月18日

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野村 滋 (のむら・しげる)

株式会社コンテンツ・ファクトリー代表

情報誌会社勤務時代に取材で、創立間もない風の谷幼稚園と出会う。その後12年間、風の谷幼稚園の変遷を追い続けている。風の谷幼稚園の教育実践記『4歳の胸のうち』『5歳の誇り』を同社から出版。

また「強い人」と萌ちゃん。“強いってどういう意味の強いなんだろう”と思い「強いっていうのは―?」と私。「こま勝負で強いってこと?」と和俊くん。思ってもみない『強い』の中身にビックリしたのは担任です。「えっ! 萌ちゃん、そう?」と思わず聞いてしまいました。
和俊くんの「こま勝負が強い人のこと?」という発言に、少々苦笑いの萌ちゃん。「う~んとね…強い人って言うのは、仲間が困っている時に守ってくれたりするような…優しい人かな…」と説明する萌ちゃんでした。                                
風2組 学級通信 「麦」より

 このような議論を経て、少しずつ「リーダーにふさわしい人物像」が明確になり、その概念が共有されていく。このプロセスを経て「リーダー決め」は、実際の選考に移っていくわけだが、ここまでの思考と議論を経験することが大切なポイントだ。

 なぜ、このプロセスが大切なのだろう? 実際に小学校や中学校、さらには大人になった現在ですら、「リーダーにふさわしい人物像」を、「きちんとした人」とか「リーダーシップのある人」という抽象的な概念で定義し、そこで思考停止してしまうことが多いのではないだろうか? しかし、これでは「リーダー選び」は感情的・表層的な選考に流れやすい。また、この人物像が具体化されるからこそ、リーダーになりたい人にとっては「リーダーに求められているものは何なのか?」が明確になり、それが行動指針となる。この一方で、リーダーを選ぶ人にとっては、この具体的人物像が客観的かつ冷静な人選を行うための基礎となる。だからこそ、このプロセスは、このカリキュラムになくてはならないものだ。

リーダー決めの深い教育意図を語る、天野園長

 「少し大げさかもしれませんが、この『リーダー決め』を通じて、子どもたちの『人を見る目』を育てていきたいと考えています。実社会においてもそうですが、リーダーとして選ばれる人よりもリーダーを選ぶ人の数が圧倒的に多いのです。だからこそ、学校教育においては、リーダーとして選ばれる人を対象にした教育とセットで、リーダーを選ぶ人の“人を見る目”や“選ぶ力”を育てることが大切だと考えています」(天野園長)

 前述したとおり、リーダーを選ぶ理由は「自分たちの生活が円滑に進むようにするため」である。決まりごととして「リーダーを選ばなければならない」から選ぶのではない。これは私たち大人も持つべき大切な視点だ。だからこそ、リーダー選びには各自が責任を持って取り組む必要があり、選ぶ側が明確な基準を持っているか否か、その基準に照らして冷静かつ客観的に人を判断ができるか否か、が重要になってくる。

 このリーダーを見極めるために必要な眼力や選択力は、一朝一夕には育たない。そこで風の谷幼稚園では「子どもたちが生きていく未来の社会」がより良くなることを願い、年長児クラスではさまざまなタイミングで「リーダー決め」の機会をつくり出し、この思考と議論を繰り返し経験させる。実に高い視点だが、「この意図を教える側が持っていること」と「繰り返し行われること」が大切なのである。

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