WEDGE REPORT

2016年11月10日

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香西聡平 (こうさい・そうへい)

ワインジャーナリスト、 共同通信社元編集委員。

テロワールに恵まれた勝沼

 甲州種は、日本固有種と思われがちだが、そうではない。元々はヨーロッパ系のブドウと中国の野生種との交雑種で、日本には仏教伝来とともに入ってきたともいわれ、千年以上の歴史を持つ。薬師如来像にブドウの蔓がみられるのがその痕跡との説もある。勝沼で栽培が本格化するのは明治時代からで、現在は大手と地元を合わせて約30カ所のワイナリーがあり、品質向上に向けて相互にブドウやワインに関する情報交換が盛んな地域でもある。

 同じ甲州種の白ワインでも、それぞれのワイナリーが独自の醸造技術を駆使し、少し芳醇なものから、すっきりしたものまで、様々なテイストに仕上がっているが、ブドウ栽培は共通の土壌で行われる。ワイン造りに注ぐ情熱が勝沼ブランドを高めたのはもちろんだが、ブドウ栽培に適した地勢という、恵まれた自然環境が決め手となったのは否定できない。フランス語の「テロワール」だ。ツアー客が、生育の良いブドウの条件に挙げた「水」、「気温」、「土壌」は、いずれも正しい答えであり、それらの条件が整っていることが、日本ワイン発祥の地になったともいえる。

 雨雲は盆地を囲む山並みに阻まれるため、盆地には降雨が少ない。降っても、なだらかな斜面で水はけが良い。盆地だから日照に恵まれ、1日の寒暖の差がかなりある―いずれもブドウ栽培には絶好の条件だ。凹凸が多く、やせた土地だから、明治時代から米作よりブドウや桃の果実栽培が志向されてきた。先達の確かな先見性を改めて見直してもよいだろう。

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