2016年12月10日(土)

J-POWER(電源開発)

2016年11月18日

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 地球温暖化防止の新たな枠組みを定めた「パリ協定」の実効性を高めるため日本は今、世界に向けて何をすべきなのか。地球温暖化の元交渉官と電源開発(J-POWER)社長が語り合う。

(左)有馬 純氏 国際環境経済研究所主席研究員・東京大学公共政策大学院教授
(右)渡部 肇史 電源開発株式会社取締役社長

「パリ協定」で見えてきた地球温暖化防止への現実路線

渡部 有馬さんはこれまで実に計11回も、COP(気候変動枠組条約締約国会議)に参加されたと伺っています。その間、資源エネルギー庁企画官として、また大臣官房審議官地球環境問題担当として、地球温暖化交渉の最前線に立っておられました。そのご経験を踏まえて、昨年12月のCOP21で採択された「パリ協定」をどのように評価されていますか?

「日本は世界最高水準の技術力で温室効果ガス削減に貢献すべきです。」

有馬 まず、今回のパリ協定がこれまでの枠組みから一歩前進したと言えるのは、それぞれの参加国があらかじめ自国の事情に応じて定めたCO2削減目標値を持ち寄るという、ボトムアップ方式が採られた点です。そして、今後その目標達成への進捗状況を報告しあい、専門家によるレビューを受けて前進させていく「プレッジ&レビュー」の枠組みを構築しました。この一連の手続きを履行することを法的に義務づける一方で、目標を達成することそれ自体には法的拘束力を設けなかった。

 こうして柔軟性と現実味が得られたことで、これまでにない実効性が期待できます。さらにアメリカや中国を含む、すべての国が参加する枠組みができた点でも、非常に高く評価できると思います。

 1997年の「京都議定書」では、先進国だけに温室効果ガスの削減目標を課したことによりアメリカが離脱。また、排出量が増大する中国にも一切の削減義務がなく、温暖化防止の観点からすると実効性を欠くものでした。ですから、すべての主要排出国が参加する枠組みをつくることは京都以来の大きな課題で、私たち日本が一貫して主張してきた方向性だったのです。

渡部 その布石となったのが、中国やインドなどの新興国にも排出削減を求めた2010年の「カンクン合意」でしたね。ちょうどその過程で交渉に当たられた有馬さんとしては、各国の立ち位置が微妙に変わっていく様を肌で感じられたのではないでしょうか。先進国と新興国が織りなす構図も変化しつつあるように思います。

有馬 先進国対新興国といった二元論ではもはや語れず、ポジションが多様化してきたことを感じますね。島嶼国やアフリカなど温暖化の影響を多大に受ける可能性のある国々にとっては、先進国の排出削減だけでは不十分で、新興国にも相応の負担を求めたいのは当然です。今回、その代表とも言える中国が一転して立場を変えたのは、国内の大気汚染問題が深刻化したことに加え、経済成長の爆発的な勢いが安定軌道に転じたことなども背景にあると考えられます。

「クリーンコール技術と再エネで低炭素エネルギーの時代を拓きます。」

渡部 有馬さんは著書の中で「温暖化交渉は地球益と国益の両方を見るべき」とおっしゃっていますが、まさに各国が凌ぎを削る経済交渉の場でもあるのですね。

 パリ協定に関してはもう1つ、世界の気温上昇を産業革命前に比べて1.5℃以内に抑える努力目標が明示されたことも注目されました。これについてはいかがですか?

有馬 野心的な目標として評価する向きもありますが、私としては実現可能性から見て問題があると懸念しています。これまで言われてきた2℃目標でさえ、2050年までに先進国からの温室効果ガス排出量が仮にゼロになったとしても、さらに途上国の一人当たり排出量を半減しないと実現できないのです。世界で未だ10億人を超える人々が十分に電力にアクセスできない状況下で、これからの経済発展が強く望まれるのに、温暖化防止のことだけを考えて施策を行うことが果たして現実的と言えるのか。冷静に議論すべき課題です。