政権人事を進めるトランプ次期米大統領はホワイトハウスの国家安全保障問題担当の補佐官にマイケル・フリン退役中将、司法長官にジェフ・セッションズ上院議員、中央情報局(CIA)長官にマイク・ポンペオ下院議員を任命・指名した。3人はイスラムに対する強硬姿勢で知られ、中東諸国では新政権が反イスラム政策を打ち出しかねない、と懸念も広がっている。
「イスラムはガンだ」
トランプ氏は連日、プリーバス次期首席補佐官やバノン次期首席戦略官ら側近とセントラルパークを見下ろすニューヨーク中心街にそびえるトランプ・タワーの私邸で政権ポストの人選を急いでいる。そうした中で同氏は18日、ホワイトハウスの国家安全保障担当の補佐官にフリン将軍を任命、司法長官、CIA長官も相次いで指名した。
ホワイトハウスの司令塔である首席補佐官にプリーバス共和党全国委員長が決まった後、最も注目されていたのは、国家安全保障担当の補佐官と国務、国防両長官の人選である。同補佐官はかつてキッシンジャー氏やスコウクロフト氏のような大物が務めた極めて重要なポストだ。
大統領に毎朝、国際情勢をブリーフィングし、いついかなる時でも、緊急事項を大統領の耳に入れ、助言する役割を担う。首席補佐官を通さずに大統領に直接面談できるというアクセス権を持っており、まさに米国の国家安全保障のすべてを把握していると言っても過言ではない。
だが、最近では、フリン将軍ほど物議を醸した軍人も珍しい。将軍はイラクやアフガニスタンにも情報将校として活動した戦歴を持ち、2012年から14年まで国防総省情報局長の要職にあった。しかし、その率直な物言いとイスラム教徒に対する敵意を隠さなかったことなどからペンタゴンの上部と衝突、オバマ大統領から解任された経緯がある。
同氏は「イスラムは悪性のガンだ」と繰り返し主張。「イスラム教徒に対する恐怖は理にかなうものだ」と述べ、イスラム法(シャリア)が米国中に広がっているなどと、反イスラム姿勢を明らかにしていた。
情報局長を解任された後、コンサルタント会社を設立してロシアの国営テレビ局などと契約。プーチン・ロシア大統領と隣り合わせで食事をしているところも伝えられた。オバマ政権がイスラム過激派との戦いを有効に行っていないなどと批判し、民主党員でありながら共和党のトランプ陣営に外交・軍事顧問として早くから加わった。
トランプ氏のイスラム教徒への反感や入国拒否などの主張に強い影響を与えたと見られている。また同氏がプーチン大統領の手腕を称賛していることについてもフリン将軍の考えが反映されているとの見方もある。フリン氏の補佐官就任は議会の承認は必要ない。