チャイナ・ウォッチャーの視点

2017年1月17日

»著者プロフィール
著者
閉じる

西本紫乃 (にしもと・しの)

北海道大学大学院公共政策学連携研究部付属公共政策学研究センター研究員

1972年広島県生まれ、広島大学大学院博士後期課程単位満了退学、元外務省専門調査員(在中国日本国大使館)。著書『モノ言う中国人』(集英社新書、2011年)。

 そのような中で、21時ごろ、23日のCA170便が24日も欠航となることが伝えられた。38人の研修生グループのうちの3人が、雪が降っていないのになぜ出発できないのか中国国際航空の日本人スタッフに詰め寄った。そこで言い争いになり、日本人スタッフが床に倒れ、航空会社側が警察に通報して警察官が駆け付けた。警察を相手にスタッフを押した、押さないの押し問答になった。警察官が1人の中国人研修生を連行しようとしたところ、昨夜から日本人に対する嫌悪感が高まっていた中国人乗客らが、騒動に加担し警察への抗議に加わった。警察官が研修生の一人を連れて行こうとしたところ、女性が悲鳴を上げて倒れ、倒れた2人の研修生ともう1人の研修生の3名が、警察によってその場から連れて行かれた。

 23日に欠航になったCA170便は、結局、25日未明にようやく、北京に向けて出発したのだった。中国メディアは25日、テレビやネットを通じて、札幌の中国総領事館のスタッフが、新千歳空港で足止めになっている中国人に食べ物を届けたと、政府のイメージをアップのための宣伝をしている。しかし実際は、領事館は中国人の騒動が警察沙汰になったことで、責任追及を恐れて腰を上げて、形だけの対応をしただけというのが実際のところではないだろうか。領事館のスタッフが空港に食べ物を届けたときには、本当にサポートが必要だった人たちは出発した後だった。

伝えられたことの誤解と誇張

 以上が複数の乗客の証言から浮かび上がった、大雪で混乱した新千歳空港で起きた中国人乗客の騒動の一部始終だ。

 今回の一件は、必ずしも中国人の「民度」が低いから起きたとは言い切れない。騒動の背景には中国国際航空の乗客配慮に欠けた国有企業体質的なサービス、新千歳空港の国際線キャパシティの問題、それと日本人と中国人双方が潜在的にもっている相手に対する不信感、といった要素があり、それらがビッグ・イレギュラーに直面して問題を噴出させたことが原因だ。

 今回の一件は、雪で閉ざされた空港の制限区域内で起きたもので、外に伝えられた情報が断片的なものしかなかった。日本の新聞・テレビ各社はYoutubeの動画などごく限られた情報しか伝えていなかったが、日本人の反響はあまりに大きかった。このニュースに関心を寄せた多くの日本人が、「だから中国はダメなんだ」という気分に浸ったのではないだろうか。

 2015年度の中国人観光客の日本旅行ブームを受けて「爆買い」が注目を集めたが、2016年は「爆買い」の減少や中国人観光客への期待や依存に警鐘を鳴らす動きが目立った。実際には、2016年は2015年に比べて日本を訪れる中国人観光客は対前年比28%増加(JNTOの2016年11月推計値)で依然として増加し続けているし、「爆買い」で安いものを大量に購入するよりも、より価値のあるものを求めたり、グルメや体験により多くお金を使う傾向にある。

 日本人の心の中には「だから中国はダメなんだ」と思いたい心理がある。中国は経済の先行きなど、リアルにネガティブ傾向を示し始めている部分もあるが、そこは理性的に分析や判断をすべきである。「だから中国はダメなんだ」という期待を肯定するための情報に安易に飛びついたりしないようにしたいものだ。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る