このレポートの筆者である在英ジャーナリスト・木村正人氏が、Brexit、欧州各地で発生したテロの現場、使用された武器の密輸ルート、シリアから押し寄せる難民が「収容」される島など、激動の現場を実際に歩いて集めた情報をまとめた渾身の一冊
「欧州 絶望の現場を歩く―広がるBreixtの衝撃」 が発売されました。
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非劇の歴史は繰り返されるのか。2016年6月の英国による欧州連合(EU)離脱決定に続いて、米大統領選で保護主義と孤立主義を強調した共和党候補のトランプが大方の予想を裏切って勝利した。
トランプは当選後、軌道修正を図っているものの、選挙キャンペーンでは、歴史上最も成功を収めた軍事同盟の北大西洋条約機構(NATO)を「時代遅れ」「金食い虫」とこき下ろした。
EUが崩壊し、大西洋をつなぐ米国と欧州の絆が綻べば、ロシアと国境を接するNATO加盟国のバルト三国で火が吹く恐れが強まる。ロシアのプーチン大統領が描く「影響力の境界」線上にある国では、すでに緊張感が高まっている。
「パルチザンを組織せよ」配布されたパンフレット
バルト三国の一つ、リトアニアは人口約286万人。国土面積6万5300平方キロメートルと北海道の8割ぐらいの広さだ。そのリトアニアとポーランド、バルト海に囲まれるロシアの飛び地カリーニングラードをご存じだろうか。ロシアの重要な不凍港の一つで、バルト艦隊の拠点である。
11月下旬、ロシア軍は対艦ミサイルをカリーニングラードに配備した。10月には核弾頭を搭載できる戦域弾道ミサイル「イスカンデルM」(射程700キロメートル)を持ち込んだ。ロシア側は「軍事演習の一環」と説明するが、ミサイル防衛(MD)を強化するNATOに対抗する狙いが浮かび上がる。
ロシアのプーチン大統領によるクリミア併合とウクライナ危機で、バルト三国は一気にきな臭くなった。リトアニアは15年、徴兵制を7年ぶりに復活させ、ロシア軍の侵攻に備えてパルチザンの結成方法を国民に伝授するパンフレットを配布した。パルチザンとは、自発的に戦う一般市民などにより構成される非正規軍のことを指す。