世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年2月20日

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 トランプ政権と近く、国務長官候補に名前が挙がったこともあるボルトン元米国連大使が、1月16日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙掲載の論説にて、米政権は「一つの中国政策」を改め、台湾への武器売却のみならず、一部の米軍を沖縄から台湾に再配置するなどして、中国と対峙すべきだ、と論じています。要旨、次の通り。

(iStock)
 

 1月初め、中国は空母「遼寧」に台湾海峡を通過させた。この動きは、台湾の蔡英文総統がトランプ次期大統領に当選を祝う電話をしたことへの対応の一部である。これが中国のやり方である。

 上海コミュニケから45年が経過した現在、「一つの中国政策」を見直し、米国がその意味をどう捉えるか再考するときがきている。トランプは、この政策は交渉可能だと言っている。交渉は米国が譲歩し中国が得をすることを意味するべきではない。我々は1972年ではなく2017年を反映する形で、戦略的に一貫性のある優先順位を決める必要があり、そこには貿易や通貨政策以上のもの、特に台湾政策が含まれるべきだ。

 米国はこれまであまりに長い間、不本意にも「一つの中国政策」という言葉遊びに付き合わされてきた。しかし、上海コミュニケにおいてさえ、「米国は、全ての中国人が、中国はただ一つであり、台湾はその一部であると信じていることを認識する」としているだけだ。

 米国は常に、中台の再統一は、平和的かつ双方の合意のもとでなければならないと主張しているが、67年が経過しても相互の合意は存在していない。中国が香港についての一国二制度を乱暴に再解釈し、それを香港に強いているのを見れば、予見しうる将来にも双方の合意は実現しえないだろう。

 米国は、台湾への武器売却を増やし、兵員と装備を台湾に再度配備することで、東アジアにおける軍事態勢を強化し得る。マッカーサーのように台湾を「不沈空母」と捉える必要はなく、相互防衛条約の再交渉も必要ない。基地駐留の権利と関連活動は、完全な防衛同盟を意味するわけではない。我々の活動は、シンガポールのやり方とそれほど変わらないだろう。台湾関係法は広範に作られており、既にそのような関係を含んでいるため、新たな権限法を通す必要はない。

 確かに、米軍の駐留は上海コミュニケ違反だと主張する向きもあるだろう。しかし、それには台湾関係法の文言が優先されるべきである。この地域の情勢は、中国が主張するような1972年の状況とは根本的に異なっている。アジアの近隣諸国は、中国の軍事力と好戦性が劇的に高まっていると見ているはずだ。より重要なことは、中台関係に恒久的な変化が生じており、上海コミュニケの大半が時代遅れになっていることである。国際法における事情変更の原則に基づけば、1972年と異なる視座に立つことは正当化される。

 台湾の地理的位置は、沖縄やグアムよりも東アジアの本土や南シナ海に近く、事態が生じた場合に、米軍が即応展開する際の広範な柔軟性を与えることになる。米国は、少なくともある程度の米軍を沖縄から台湾に再配備し、日本との緊張を緩和することもできるだろう。それに現在のフィリピン指導部を見れば、予見しうる将来、米比の軍事協力を強化する機会はあまりなさそうである。

 海洋の自由の維持、軍事的冒険主義の抑止、一方的な領土併合の阻止は、東アジアおよび東南アジアにおける核心的な米国の利益である。現在では、1972年とは逆に、台湾との軍事関係の緊密化が、これらの目的を達成するのに重要な一歩となるはずである。もし中国が異議を唱えるならば、もちろん話し合う余地はある。

出典:John Bolton,‘Revisit the ‘One-China Policy’’(Wall Street Journal, January 16, 2017)
http://www.wsj.com/articles/revisit-the-one-china-policy-1484611627

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