チャイナ・ウォッチャーの視点

2017年3月1日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団特任研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

 2006年に、初のリモート・センシング衛星「遥感1号」の打ち上げに成功してから、2016年5月に「遥感30号」衛星を打ち上げるまで、わずか10年である。中国の公開データによれば、別の商用リモート・センシング衛星「高分2号」の対地解像度は0.8メートルである。

 中国 航天科技集団公司(CASC: China Aerospace Science and Technology Corporation)は、2022年に、解像度0.5メートルの商用リモート・センシング衛星網を整備する計画である。中国が整備する軍用衛星網は、さらに高い解像度を誇るという。中国は、海洋偵察監視センサー・ネットワークを構築し、海空軍活動範囲の拡大を支援している。

 CASCは、元々、国有企業であった訳ではない。CASCの前身は、前出の国防部第五研究院である。国防部第五研究院は、国務院の国防科学技術工業管理体制改革の戦略に沿って、1997年7月1日、中国航天工業総公司という国有企業となり、その後、中国航天科技集団公司となった。そして、中国の宇宙開発に係る衛星や宇宙船は、CASCが開発している。

 CASCは、2018年に、ペイロード1.5トンという超大型プラットフォーム衛星を打ち上げる予定である。これは、通信衛星及び高軌道リモート・センシング用プラットフォームとしてだけでなく、宇宙探査にも応用できるとしている。

 また、中国は、高速ブロードバンド衛星を2018年末に打ち上げ、2019年から運用するとしている。中国は、これにより、国内外を飛行する航空機、世界を航行する艦船、陸上を移動する車両等に高速大容量通信を提供できるとし、「一帯一路」戦略及び海外発展戦略に貢献するという。

「米国に勝てない」と考える中国が仕掛ける非対称戦

 中国人民解放軍では、こうした支援活動を行うための新たな部隊が設立されている。「戦略支援部隊」である。戦略支援部隊の主要任務は、「宇宙、深宇宙、ネットワーク、サイバー空間における優勢を確保し、人民解放軍の作戦を有利に進めること」であるとされ、具体的任務として、情報、技術偵察、電子戦、サイバー戦、心理戦を含む特殊作戦、整備補給(目標の捜索探知追尾、目標情報の伝達を含む)、日常的な航法援助活動、「北斗」及び宇宙情報収集手段の管理業務、サイバー攻撃/防御、ネットワーク防御等が挙げられている。

 戦略支援部隊は、旧総参謀部第2部(情報、HUMINT等)及び第3部(技術偵察)、さらに旧総装備部の任務を統合継承し、新たに創設された部隊である。中国の宇宙開発に深く関わる組織なのだ。

 しかし、これだけのセンサー網や通信網を整備しても、中国のネットワーク・セントリック・オペレーションは、米国にはるかに及ばない。個々の衛星等の能力を向上させ、物理的には接続できるようになっても、複数のシステムを統合してさらに大きなシステムを構築する「システム・オブ・システムズ」のノウハウは簡単に手に入るものではないのだ。

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