チャイナ・ウォッチャーの視点

2017年3月1日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団特任研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

自国の測位航法システムの必要性

 現在の中国の宇宙開発は、すでに、単に弾道ミサイルの技術開発のためだけに行なわれている訳ではない。衛星を用いた各種ネットワークを形成し、宇宙ステーションを持ち、月開発まで視野に入れている。

 中国は、米国が中国に軍事攻撃する可能性を考慮する。それゆえ、日本では非常に便利に利用されるGPS(Global Positioning System)も、中国は軍事的に利用することはできない。中国は、自国で同様の測位衛星航法システムを構築する必要があるのだ。

 「北斗」システムである。中国は、2017年1月現在、すでに、4基の試験衛星を除いて、23基の「北斗」衛星を運用している。「北斗」システムは、2012年に、中国周辺で測位精度を10メートルにまで高めたという。

 「北斗」システムはまだ完成した訳ではない。中国は、2020年までに35基の衛星によって、「北斗」測位衛星航法システムを完成させるとしている。GPSと同様、全地球型測位航法システムを目指すのだ。

 この2020年は、中国海軍発展の第二段階が目標とする時期でもある。中国海軍は、2020年までに、空母打撃群を世界中に展開し、軍事プレゼンスを示すことを目標にしている。中国が世界に軍事行動を拡げるために、自国の測位航法システムが必要なのである。

 因みに、2020年は、中国が言う「二つの百年」の一つでもある「中国共産党結党100年」の2021年を意識したものだ。鄧小平は、2021年までに、「小康状態」を達成するよう指示した。経済発展して国民を豊かにしろ、ということだ。

最も中国本土から離れた海域で米艦隊を攻撃するために

 しかし、中国は、米国が中国の経済発展を妨げると考えている。米海軍の中国攻撃を阻止する戦略であるA2/ADは、今ではよく知られている。A2/ADという言葉自体は、米国国防総省のネット・アセスメント室が使い始めたものだが、中国が、なるべく本土から離れた地点で米海軍艦隊を叩きたいと考えていることに間違いはない。

 最も中国本土から離れた海域で米艦隊を攻撃するのは、ASBM(対艦弾道ミサイル:Anti-Ship Ballistic Missile)である。ASBMが正確に米海軍の艦艇を打撃するためには、本土から3000キロメートル以上離れた海域における正確な目標位置情報が必要である。目標情報がなければ、発射諸元を入力できないからだ。

 中国は、衛星等によって、太平洋に500万平方キロメートルに及ぶ、対艦弾道ミサイル発射諸元用の捜索範囲を有しているとしている。中国は、海上偵察監視センサー・ネットワークの構築にも熱心に取り組んできたのだ。

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