世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年3月24日

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 これまでトランプ叩きに終始してきた感のあるニューヨーク・タイムズが前向きの提言を掲載したことには意味がありますが、提言自体は現在のトランプ政権の状況から少しずれている面があり、また中国の力を過大評価することでその影響力を不必要に高めてしまう弊も見られます。

 ブレジンスキー、キッシンジャーといった欧州出身のユダヤ系戦略家たちには、米国の軍事力を操縦して欧州、中東の安定を実現しようとする性向があります。本件論説も米国の世界への関与をトランプに宣言させようとしていますが、トランプ大統領に求められていることは、内向きになりがちの米国民に対して、世界との関係が如何に重要で利益になるかを納得させること、そして世界に対して米国は自由、民主主義、市場経済の支えとなることを宣言することでしょう。

 フリン大統領補佐官辞任の頃は、トランプ政権も早や、レームダック状態を呈していましたが、マクマスターの任命で事態は小康状態にあります。その中で次第に明らかになっている傾向は、「実際の外交・安全保障政策は国務省・国防省の実務家が既存の路線を踏襲。トランプ大統領はトーク・ショーの司会者よろしく、横からコメント」という感じです。トランプが「教書」の類を格調高く読み上げれば、彼の支持層は離れていくことになるでしょう。

 オバマ大統領は、海外での軍事介入を忌避する一方では、「レジーム・チェンジ」という言葉に象徴される、民主化のための介入を続けました。これがウクライナのように事態を不安定化させると、軍事介入に及び腰なオバマ政権はロシアの限定的な軍事力使用になすすべがなく、面目を失ってきました。

 トランプ政権はこれとは異なるものになるでしょう。トランプ自身の親ロ的傾向はフリン補佐官辞任事件等によって封印され、マケイン上院議員等の率いる「民主化のための介入」工作は(米国諜報機関、国務省の一部の部局及びNGOが行っている)、オバマ時代よりも大胆な海外軍事行動によって支えられることになるでしょう。

 ロシアはこれまで、トランプ政権の「親ロ」的傾向を慎重に品定めしてきましたが、次第にこれを見限る姿勢に転じて来るでしょう。ただし、ロシアによる限定的な軍事作戦で鼻を明かすことのできたオバマ政権の時と違って、現在の米国に対抗しようと思えば、ロシアの国力を傾けるような軍事行動を強いられるリスクがあります。

 したがって、当面、ロシアは中国との連携を強化しようとするでしょう。それは中国にとっても渡りに船でしょう。当面5月14日北京で予定される第一回「一体一路諸国首脳会議」、及びその際のプーチン大統領訪中が一つの節目となると思われます。ただし、中国も最近は資金切れの感があり、「一帯一路諸国首脳会議」首脳会議も前向きの勢いを欠くものと予想されます。

  
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