2024年12月7日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年3月24日

 カーター大統領の安全保障問題担当補佐官を務めたブレジンスキーと米国のシンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)リサーチ・アソシエイトのワッサーマンが、2月20日付ニューヨーク・タイムズ紙掲載の論説において、世界はトランプ政権の発する支離滅裂な発言に戸惑っているので、「トランプドクトリン」と呼べるような簡潔なスピーチを行って、米国の世界への関与を明確に示せ、と論じています。要旨、次の通り。

(iStock)

 世界の秩序は混乱し、諸問題を処理できないばかりか、主要大国間の関係の乱れは真に破滅的な結果をもたらしかねない。トランプ大統領自身が国際情勢について意味と重みのある発言を行えないでいる今、世界は彼の側近たちが打ち出す無責任、未調整、かつ無知ぶりをさらけ出した発言に戸惑っている。これら側近は自分を売り込みたいだけなのであり、彼らの発言を米国の政策と受け取ってはならない。

 我々はトランプを支持しなかったが、彼は今や米国大統領、つまり我々の大統領であり、我々は彼に成功して欲しい。今のところ、外国あるいは我々には、彼は成功しているように見えない。

 米国は世界に対して明晰な思想と、将来への希望と前進を体現するリーダーシップを提供せねばならない。米国外交は、“Make America Great Again”(米国を再び偉大に)のような選挙スローガン以上のものを必要としている。

 トランプ大統領には、詳しい外交教書というよりも、世界の安定を確保する上で米国がリーダーシップを発揮するという決意を披歴し、一定の歴史観の上に行動していることを示すスピーチをすることを勧める。そこでは、米国はなぜ世界にとって重要なのか、なぜ世界には米国が必要なのか、そして米国は世界に何を期待しているのかを述べて欲しい。「トランプドクトリン」と呼べるようなものを示すことが必要である。

 そのスピーチの中で、理想的な長期的解法は米中ロシアという三軍事大国が協力して世界の安定を支えることであることを認めて欲しい。三国関係の中では米中関係が特に重要で、米中間で合意に達すれば、ロシアも加わらざるを得ないだろう。

 直近の脅威である北朝鮮については、中国及び日本(そしてもしかするとロシア)と協力して対処せねばならない。

 ロシアには国際法を守らせないといけない。トランプ大統領がロシアと建設的協力関係を築こうとするのは賢明なことだが、ロシアに対しては米国が何を許容でき、何を許容できないかを明確にしておくことが必要である。

 地域的問題に対処するためには、日本及び英国のようなパートナー諸国と認識をすり合わせていくことが必要である。

 トランプ政権が日本及び韓国を防衛する約束を再確認したのはいいが、西欧及び中欧の防衛も心がけて欲しい。ロシアに対しては、ロシアが欧州に軍事侵略することがあれば、ロシアを海上封鎖する用意があることを示しておくべきである。

出典:Zbigniew Brzezinski & Paul Wasserman,‘Why the World Needs a Trump Doctrine’(New York Times, February 20, 2017)
https://www.nytimes.com/2017/02/20/opinion/why-the-world-needs-a-trump-doctrine.html


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