英フィナンシャル・タイムズ紙は、トランプ大統領の習近平国家主席との電話会談、および安倍総理との首脳会談を観察して、トランプの政策が従来の米国の政策の伝統に忠実なものであり続けることに希望を抱かせるという社説を2月13日付で掲載しています。要旨、次の通り。
トランプ政権のアジア政策の初動は不穏なものであった。TPPから早々に離脱した。台湾、南シナ海を巡って中国と対決する積りのように見えた。日本、韓国との同盟に懐疑的と見られてきた。ところが、トランプの日本と中国に対するアプローチはもっと伝統的なもののように見え始めた。このことは重要であり、安堵させるものである。最も重要な出来事は、習近平国家主席との上出来の電話会談と安倍総理との長時間の暖かい会見であった。
中国については、トランプは「一つの中国」政策を疑問視する刺激的な態度から後退した。少々屈辱的ではあったが、危険な米中関係の危機を回避することになった。また、南シナ海における中国の人工島建設についても穏当な立場に立ち返ったようである。人工島を海上封鎖するが如きティラーソンの議会の指名公聴会での発言はその後軌道修正が図られた。
日本についていえば、安倍総理は、素早く手際よく、日本は不可欠の同盟国であることを示して見せた。TPPの解体は総理にとって痛手であったが、米国との特別な関係に代わるものがないことは総理には解っていた。総理はトランプから意味のある公の約束を取り付けたわけではないが、個人的関係を作ることには成功した。トランプの保護主義的、孤立主義的な本能に鑑みれば、これは成果である。
北朝鮮の弾道ミサイル実験のニュースによって日米関係の重要性が強調されることとなった。トランプは北朝鮮の核の脅威に対し強硬で過激な行動に出ることを選挙戦では示唆していた。しかし、トランプの反応はアジアの同盟国を支持し北朝鮮に安保理決議を順守するよう求める慎重で伝統的なものであった。
トランプ政権のアジア政策における最近の行動は分別のあるものである。しかし、最も重要なテストはこれからである。ホワイトハウスから聞こえて来るレトリックは依然として中国や日本との貿易戦争を示唆する。アジアの問題が複雑なことに鑑みれば、トランプの気紛れな気性は引き続き懸念材料である。しかし、米国のアジアに対する態度が、トランプ時代にあっても、過去数十年の米国の政策の基本的原則に忠実であり続けることに希望を抱く理由はある。
出典:‘Donald Trump’s tack towards the mainstream on Asia’(Financial Times, February 13, 2017)
https://www.ft.com/content/aed44d88-f1e5-11e6-8758-6876151821a6