2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年3月15日

 この社説には、「米国大統領の政策は安心できる伝統的なものかもしれない(The American president’s policies may be reassuringly conventional)」とサブタイトルが付いています。日米首脳会談を観察した誰しもが、首脳会談が伝統的な型のもので、双方にとって成功と言い得るものであったことに安堵したかもしれませんし、あるいは呆気にとられたかもしれません。

安心するのは時期尚早

 しかし、トランプ大統領個人が伝統的な政策に回帰したと見ることは時期尚早でしょう。日米首脳会談は非常に巧みにマネージされたのだと思います。総理自身および事務当局の知恵と根回しによるシナリオ作りが成功したということであり、評価されるべきです。

 シナリオのうち、安全保障については、マティス国防長官の訪日で大筋決まっていたのでしょう。問題は経済関係だったと思われますが、ペンス副大統領を担ぎ出し、対話の枠組みを作ることとして、トランプが持ち出すかもしれない個別の課題はここに流し込むこととしたことは、まさに知恵です。副大統領を担ぐという先例の無い知恵はトランプに物を言える人物に照準を定めたということに違いありません。

 トランプといえども、選挙戦のタウンホールではないのですから、首脳会談にシナリオなしに臨むわけにはいきません。振り上げた拳を下す先を探していたところに対話の枠組み作りを持ちかけられて、これに乗ったということなのではないでしょうか。

 ただ、トランプ政権の出方には今後も警戒を要します。特に、経済問題に関する対話は難題です。しかし、トランプに物を言える人物に照準を定め、巧みなシナリオを書くことによって、トランプ政権との関係をマネージすることは可能かも知れません。そういう意味で、「トランプの政策が従来の米国の政策の伝統に忠実なものであり続けることに希望を抱かせる」との、社説の結論は基本的に正しいと思います。

  
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