前向きに読み解く経済の裏側

2017年3月20日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 カジノ法案が通りました。日本にも、本格的なカジノができるのでしょう。カジノというと、バクチだと言う人がいます。バクチなら競輪や競馬やパチンコと同じではないか、という人もいます。しかし、それを言うなら、東証が日本最大のカジノかもしれません。今回は、株式投資がバクチなのか否かについて、考えてみましょう。

(iStock)

ルーレットの赤黒と株式投資の損得

 ルーレットで、赤が出るか出ないかは、全くの偶然です。実はディーラーは赤を出すか否かコントロールできているという噂もありますが、仮にそうだとしても、顧客の立場で見れば偶然だ、ということが重要なのです。ディーラーがイカサマをしていない、ということが大前提ですが。そこで、赤に賭けるのはバクチ(賭博とも呼びます)だと言われます。

 では、株式投資はどうでしょうか? 今日株を買って、明日売るとします。株価が上がるか下がるかは、偶然でしょうか? 偶然ですね。それは、株価の短期的な値動きのメカニズムを考えればわかります。今日から明日にかけて、株価が上がったとします。それは、投資家たちが「株価は値上がりするだろうから、買い注文を出して他の投資家よりも先に買おう」と考えるからです。投資家たちがそう考える理由は、ニュースが流れたり、噂が流れたりするからでしょう。

 「天気が良いので気分が良くなって買い注文を出した」という投資家が多くても株価は値上がりしますが(笑)。

 問題は、今日の時点では、明日の投資家が買い注文を出すか否かが分からない、ということです。「今晩、良いニュースが流れるだろう」ということを予想出来る人がいれば、それは予言者です。もちろん、当事者で、秘密の情報を知っている人もいるでしょうが、そうした人が株の売買をしたとすれば、インサイダー取引として処罰されてしまうでしょう。あるいは、自分で株価の上がりそうな噂を流すこともできますが、そんなことをしたら相場操縦の罪で、やはり処罰されてしまうでしょう。つまり、投資家たちは、明日の株価が上がるか否か、今日の時点では知り得ないので、株式に投資することは「ルーレットで赤が出る方に賭ける」のと本質的に同じだ、ということになります。

 ちなみに、カジノと同様、こうした株式投資の期待値はマイナスです。カジノでは、ルーレットの赤に賭けると、当たれば2倍になりますが、当たる確率は50%より若干低い(0と00は、赤でも黒でも無いから)ので、期待値はマイナスです。株式投資も、勝ち負けの確率が五分五分だとすると、証券会社の手数料や税金の分だけ期待値はマイナスになります。

 「自分は才能があるから、勝率は5割以上だ」という人もいるかもしれません。デイトレーダーと呼ばれる人の中には、相場の流れを他の投資家より素早く読み、短期売買で利益を稼いでいる人もいるようです。そうした人についてもバクチだと考えるべきか否かは微妙ですが、「麻雀がとても強くて賭け麻雀の勝率が9割だ」という人でも賭博罪で捕まりますから、腕利きのデイトレーダーもバクチだと考えて良いでしょう。刑法の賭博罪には当たりませんが(笑)。

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