科学で斬るスポーツ

2017年3月28日

»著者プロフィール
閉じる

玉村 治 (たまむら・おさむ)

スポーツ科学ジャーナリスト、科学ジャーナリスト

小学校より野球をはじめ、大学では投手として活躍。スポーツを科学的に分析することを得意とし、バンクーバー、ロンドン五輪、ワールドカップサッカーなどで取材。

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で侍ジャパンは残念ながら準決勝でアメリカに惜敗し、優勝を逃した。しかし、連帯、粘り、速さが信条の日本野球を強力に世界にアピールした。中でも注目されたのが不動の4番を務めた筒香嘉智(DeNAベイスターズ)。山田哲人(ヤクルトスワローズ)と並んで、アメリカ戦ではマークがきつく結果は出せなかった。筒香らは、日本式野球に受け継がれる固定観念をはねのけ、独自の打撃理論を貫く意志の強さを持つ。野球は進化しなくてはならない。二人の活躍は、野球に対する考え方に変革を迫る。

筒香選手(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

「脇をしめろ」にあらがう

 WBCの準決勝は微妙に動くボールに筒香は手こずった。2次ラウンドまでの成績は22打数8安打3本塁打8打点と好成績を残した。アメリカが最も恐れた打者で、短期決戦では、適応しにくい、変則球を持ち味とする投手を当ててきた。アメリカ戦1対2でリードされた8回2死1、2塁の同点、逆転機に打席に立ったが、打球の角度はよかったものの、失速しライトフライに終わった。無安打だった。

 「技術不足、練習するしかない」と語る筒香。しかし、ここ1年の技術向上はめざましい。昨シーズンは、打点、本塁打のタイトルをものにし、二冠王に輝いた。月間16本の日本人最高(外国人ではバレンティンの18本)タイの本塁打も記録した。侍ジャパンの4番につながる活躍となった。

 「打撃に対する確固たる信念に基づいてトレーニングし、他には追随できない技術を身に着けた。大リーグでも通用する技術」とスポーツ選手の動作の3次元解析を進めるフェアプレイ・データの石橋秀幸社長は指摘する。

 その端的な例が、日本の野球指導では主流の「脇をしめろ」にあらがっている点にあるという。「上からたたけ」「脇をしめろ」というのが日本の野球理論、指導の主流である。石橋さんは「(脇をしめろは)けっして間違った指導ではない。特に、体幹などの筋肉が十分でない少年には、まずは身につけなくてはならない基本のセオリー」と語る。

脇をあけることで、バットが水平に

 その上で、「しかし、筒香は、手元で微妙に変化する動くボールに対応できるよう、脇をあける技術を身に着けた。脇をあけることで、バットは水平になる。脇を締めるとバットのヘッドは下がったり、上がったりする。これでは動くボールに対応ができない。動くボールに対応するために、バットが水平にならなくてはならない。これこそ大リーグに適応した打撃理論」と石橋さんは語る。

 この左脇をあけて、投球を手元に引き付けて打つ典型的な打者として、ニューヨーク・ヤンキースで2014年までプレーしたデレク・ジーターがいる。コースによっては脇をしめて対応できる技術も合わせ持ち、難しい球をキャッチャーミット前でカットできるうまさを備えた名選手だった。ヤンキース一筋で活躍し、大リーグ歴代6位の3465安打を記録した。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る