シリーズ「待機児童はなぜ減らないのか?」

2017年4月10日

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小林美希 (こばやし・みき)

労働経済ジャーナリスト

1975年生まれ。株式新聞社、毎日新聞エコノミスト編集部を経て2007年2月からフリーのジャーナリスト。「ルポ看護の質〜患者の命は守られるのか」「夫に死んでほしい妻たち」(朝日新書)、(岩波新書)「ルポ保育崩壊」(岩波新書)と「ルポ母子家庭」(ちくま新書)「ルポ“正社員”の若者たち」(岩波書店)、「看護崩壊」(アスキー新書)、「ルポ職場流産」(岩波書店)、「ルポ産ませない社会」(河出書房新社)など

シリーズ「待機児童はなぜ減らないのか」では、いつまでたっても一向に改善されることのない待機児童問題の根本原因はどこにあるのか。「需要予測のミスマッチ」「非正規労働者の育児休業の実態」「共働きと長時間労働」「社会構造の変化」という点から解き明かしていく。

 「0歳でも保育園は激戦。なんとか滑り込めたが、本当なら、1歳くらいまでは自分で育てたかった」

 都内に住む古田茜さん(仮名、36歳)は、複雑な心境だ。何度か転職を経験して、今の職場で契約社員として働いて2年目での妊娠となった。「半年くらいでも育児休業を取りたい」と願い出ると、会社は育児休業を取ることを認めてはくれず、「産後8週の産後休業で職場復帰して働き続けるか、いったん辞めて産後に落ち着いたら復帰してください」と二者択一を迫られた。

 本来は、非正社員でも一定の要件を満たせば育児休業を取ることはでき、法律上、茜さんは育休を取ることができたが、「会社がそう言っている以上、闘えない。妊娠中でストレスを抱えたくない」と育休を断念。出産ギリギリまで働き、産後すぐに復帰することにした。食品関係の営業職の茜さんは非正規でも1日8時間のフルタイムに残業も多かったため、なんとか保育所に滑り込めたが、周囲にいる1日6時間勤務のパート社員は保育所には入ることができなかった。「1歳児になってからでは難しかっただろう」と痛感する。

(iStock)

 「残念ながら非常に厳しい状況になっているのは事実だ」。2月17日の衆議院予算委員会で、安倍晋三首相はこう答弁した。安倍政権では、2013年度から17年度末までに50万人分の保育の受け皿を用意して待機児童ゼロを掲げていたが、17年度末の待機児童ゼロについて断念した。

 昨年の今頃は匿名ブログ「保育園落ちた日本死ね」が大きな反響を得て、待機児童問題が国会でも大きく取り上げられるようになった。保育所への入園申し込みの結果が出る2月以降、今年も「保育園に入れなかったという声が大きく聞こえてくるが、いったい、なぜ待機児童は減らないのだろうか。筆者は、0歳児保育の必要性が見落とされていることが大きな原因だと見ている。

 3月26日、日本経済新聞は「厚生労働省は、待機児童の解消に向け2018年度から、全国の保育所で1~2歳児などの受け入れ枠を増やす。通常よりも多くの保育士が必要な0歳児枠をできるだけ減らし、浮いた保育士を1~2歳児に振り向ける」との内容を報じた。1~2歳児の保育士配置基準が子ども6人に対して保育士1人(「6対1」)であることから、配置基準が「3対1」と高い0歳児の枠をできるだけ減らして、1~2歳児を増やそうという計画だという。この記事が事実であるか厚生労働省の保育課に確認をすると「事実無根」としている。ただ、行政側としては「コストのかかる0歳児はなるべく作りたくない」というのも本音だろう。

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