前向きに読み解く経済の裏側

2017年4月17日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 景気が良いか悪いかで、多くの人が影響を受けます。そこで、景気に関するニュースは溢れていますし、日常会話でも景気に言及することもあるでしょう。しかし、景気について真剣に考えた事のある人は意外と少ないようです。そこで今回は、景気というものが、どのように変動するのか、それをどうやって予想するのか、考えてみましょう。

(iStock)

教科書には「キチンの波(キチン循環)」等々

 経済学の教科書には、「キチンの波(キチン循環)」「ジュグラーの波(ジュグラー循環)」などが載っています。在庫循環、設備投資循環などで景気が変動する、循環する、というわけです。たとえば「在庫が増えすぎると企業は生産を減らし、次第に在庫が減ってくると企業は再び生産を増やし、再び在庫が過剰になるまで40ヶ月程度を要する場合が多い」「10年前に設備投資ブームがあったので、10年経過して設備機械が古くなり、一斉に新しい機械に取り替えられるので、設備投資が増加して景気が回復する」ということでしょうか。

 そうしたことが絶対に起きないと言うつもりはありませんが、それが景気を動かす主な要因だとは決して思いません。在庫投資は最近のサービス化した先進国経済に於いて、ウエイトが低いですし、設備投資もコンピューター関連のものはサイクルが遥かに短いなど、業種等によりサイクルに差があるので、景気全体を動かすサイクルがはっきりしているか否かも疑問です。

 まして、リーマン・ショックのような出来事があると、在庫循環も設備投資循環も過去と断絶しますので、過去のサイクルでそれ以降を説明する事は不可能でしょう。

景気は自分では方向を変えない

 景気変動の基本は、景気は自分では方向を変えない、ということです。景気が上を向いている時は、外から力が加わらない限り、そのまま回復・拡大を続けるのです。「売上が増えると企業は生産を増やすために雇用を増やす。すると給料をもらった元失業者が物を買うので、物が一層よく売れるようになる」、といった好循環が働くからです。企業は、物が売れるので、新工場を建設するかもしれません。銀行も、景気が良い時には借り手企業が黒字なので、喜んで融資するでしょう。もしかすると、不況期には貸し倒れが増えて自己資本が減っていた銀行が、景気回復で自己資本が増え、自己資本比率規制を気にせず融資が出来るようになるかもしれません。

 地方公共団体も、景気回復で税収が増えると歳出を増やせるようになるかも知れません。サラリーマンも、景気が回復するとリストラされる心配が減るので財布の紐が緩んだり、住宅ローンを借りて家を建てようと思うかも知れません。

 景気が悪化している時は、全く反対のことが起きるはずです。物が売れないから企業が物を作らない、従って人を雇わないから失業が増え、失業者は物を買わないから、一層物が売れなくなる、といった具合です。

 そうした景気に対して、方向を変えるのは政府・日銀の財政金融政策と外的ショックです。バブルが関係する場合もあります。

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