海野素央の Love Trumps Hate

2017年4月21日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「トランプ・バノンのパトロン『マーサー一族』」です。ドナルド・トランプ米大統領とスティーブン・バノン大統領首席戦略官兼上級顧問の背後には大富豪の資金提供者が存在します。ヘッジファンドで財をなしたロバート・マーサー氏と娘のレベッカ・マーサー氏です。本稿では、トランプ大統領、バノン氏及びマーサー一族の関係を中心に述べていきます。

(iStock)

トランプ・バノンとマーサー一族の関係

 マーサー一族は2016年米大統領選挙における共和党予備選挙でテッド・クルーズ上院議員(テキサス州)の支持者でしたが、同上院議員が敗れるとトランプ候補(当時)支持に乗り換え資金提供を行いました。元IBMの社員であったロバート・マーサー氏は、小さな政府を信条とするリバタリアン(自由至上主義者)であり反エスタブリッシュメント(既存の支配層)です。

 米メディアによりますと、マーサー氏は米国がイラクの石油を確保しておくべきであったと語っています。選挙期間中トランプ大統領もイラクの石油を手中にしておくべきであったと主張していました。同氏は広島と長崎への原爆投下を正当化する発言もしています。

 さらに、マーサー氏は1964年の公民権法は最大の誤りであり、米国社会には白人至上主義者は存在せず、アフリカ系の人種差別者がいると言うのです。マーサー一族は白人至上主義者だとみられているバノン氏が会長を務めていた極右サイト「ブライトバート・ニュース」に1000万ドル(約10億9000万円)、トランプ陣営には1350万ドル(約14億7000万円)の資金提供を行っています。

トランプはバノンのクビを切ることができるのか?

 バノン氏が描いた米国第一主義は不介入主義です。にもかかわらず、トランプ大統領はシリア及びアフガニスタンに対してミサイル攻撃を行い、北朝鮮には朝鮮半島近海に原子力空母「カールビンソン」を派遣して圧力を加えようとしています。これらは明らかに同大統領の政策における変化といえます。

 米ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)のインタビューの中で、トランプ大統領はバノン氏に関して選挙戦のかなり終盤になるまでトランプ陣営に入っていなかったと述べました。その上で、「自分の戦略家は自分自身だ」と主張して一定の距離を置いたのです。では何がそうさせたのでしょうか。

 議会に支持基盤のないトランプ大統領は、オバマ前大統領の医療保険制度改革(通称オバマケア)に対する代替法案の撤回を通じて議員に不人気のバノン氏との密接な関係を維持している限り、議会からの支持獲得は困難であることを学習しました。そこで共和党主流派路線にシフトしたのです。

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