シリーズ「東芝メモリを買ってほしいところ、買ってほしくないところ」

2017年6月5日

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湯之上隆 (ゆのがみ・たかし)

微細加工研究所所長

1961年生まれ。静岡県出身。京都大学大学院(修士課程原子核工学専攻)を修了後、日立製作所に入社。以後16年にわたり、中央研究所、半導体事業部、デバイス開発センタ、エルピーダメモリ(出向)、半導体先端テクノロジーズ(出向)にて、半導体の微細加工技術開発に従事。2000年に京都大学より工学博士授与。現在、半導体産業と電機産業のコンサルタントおよびジャーナリスト。微細加工研究所所長。著書に『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』(文春新書)など。

 4月13日から10回連載シリーズで開始したコラム「東芝メモリを買ってほしいところ、買ってほしくないところ」も、とうとう最終回を迎えることになった。当初の目的は、「東芝メモリの技術者にとってベストな買収先はどこか?」を示すことにあった。

 しかし、四日市工場でNANDを共同開発し生産している東芝と米ウエスタンデジタル(WD)が、ケンカを始め、それが泥沼のバトルへと発展したため、先が見えない状態になってしまった。

 現時点では、このバトルの着地点が予測できない。したがって10回シリーズ「東芝メモリの技術者にとってベストな買収先はどこか?」の結論を導き出すこともできない。実際、5月19日に第9回目のコラムがアップされて以降、10日間以上、最終回が書けない中途半端な状態が続いていた。

 しかし、中断がこれ以上長引くのは、読者にとっても、編集部にとっても、私にとっても、精神衛生上よろしくない。

 そこで、不本意ではあるが、本稿では以下を述べる。まず東芝とWDが行っているバトルを簡潔に示す。次に、このバトルが長引くとどんな悲惨な結末が待っているかを予測する。さらに、このバトルを横目で見ている同業他社は、どんな動きをしているかを解説する。そして最後に、東芝とWDは、早期に和解してバトルを終結させなければ、東芝も、東芝メモリも、WD(のNAND)も、お先真っ暗であることを明らかにする。

東芝メモリの第2入札

 5月19日に、東芝メモリ売却に関する2次入札が行われた(表1)。

 「東芝メモリの分社化も売却も契約違反」であることを主張するWDは応札せず、東芝と個別交渉することになった。

 2次入札前には、WD、産業革新機構、日本政策投資銀行などと連携すると報道されていた米ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)は単独で応札した。

 韓国のSK Hynixは独禁法に抵触する上、外為法にも違反する。そこで、連携する米ファンドのベインキャピタルが新会社を立ち上げて、そこが東芝メモリを応札することにした。これなら、独禁法も、外為法違反も、関係ない。そして新会社による東芝メモリの買収が完了した後に、新会社とSK Hynixが合弁するという戦略に打って出た。

 中国に工場がある台湾ホンハイは、日本政府に外為法違反で排除されようとしている。そこでホンハイは外為法違反を回避するために、あの手この手を考え出した。

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