シリーズ「東芝メモリを買ってほしいところ、買ってほしくないところ」

2017年5月18日

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湯之上隆 (ゆのがみ・たかし)

微細加工研究所所長

1961年生まれ。静岡県出身。京都大学大学院(修士課程原子核工学専攻)を修了後、日立製作所に入社。以後16年にわたり、中央研究所、半導体事業部、デバイス開発センタ、エルピーダメモリ(出向)、半導体先端テクノロジーズ(出向)にて、半導体の微細加工技術開発に従事。2000年に京都大学より工学博士授与。現在、半導体産業と電機産業のコンサルタントおよびジャーナリスト。微細加工研究所所長。著書に『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』(文春新書)など。

 米ウエスタンデジタルは5月15日、東芝によるNAND事業の分社化も売却も合弁契約に違反しているとして、分社化の撤回と売却の差し止めを命じるよう、国際商業会議所(ICC、本部パリ)の国際仲裁裁判所に仲裁を求めた(ロイター)。東芝の綱川社長は記者会見で、「契約には違反していない。5月19日の2次入札の締め切りに変更はない」と発表した。

 予定通り2次入札が行われるかどうか定かではないが、1次入札を通過した4陣営が2次入札に臨むと仮定した上で、産業革新機構が東芝メモリを買収するべきではないことを論じる。

2次入札に臨む4陣営

 3月29日に行われた東芝メモリの1次入札では、その動向が注目されていた産業革新機構と日本政策投資銀行は、応札しなかった。しかし、5月中旬に行われる2次入札では、東芝メモリとNANDを共同で開発し製造している米ウエスタンデジタル(WD)、米ファンドKKR、経済産業省が参集している日本企業連合等とともに、革新機構や政策銀も応札すると報道されている。その他に、韓国SK Hynixの陣営、台湾ホンハイの陣営、米ブロードコムの陣営が応札する模様である(表1)。

 革新機構の東芝メモリへの出資は、果たして合法なのか? 本稿では、まず、革新機構の出資は明らかに違法であることを示す。次に、メモリビジネスの本質を考えた場合、革新機構や政策銀が出資すると、東芝メモリの息の根が止る可能性が高いことを警告する。

革新機構の出資は法律違反

 革新機構の正式名称は、「株式会社産業革新機構」であり、2009年7月に産業競争力強化法という法律に沿って設立された官民出資の投資ファンドである。ただし、官民とは言ってもその95%は税金から拠出されており、“官ファンド”の色合いが濃い。

 その革新機構は、前記法律の第1章第2条第3項で、「新商品の開発又は生産、新たな役務の開発又は提供、商品の新たな生産又は販売の方式の導入、役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動であって、産業競争力の強化に資するものとして主務省令で定めるもの」にのみ投資することができると定められている。

 その革新機構が東芝メモリの買収に投資することは、合法であろうか?

 もし、その投資資金が東芝メモリに注入されて、最先端メモリの研究開発や設備投資に使われるとしたら、合法と言えるかもしれない。

 しかし、今回の東芝メモリの買収においては、革新機構が投じた資金は、東芝メモリには一切使われず、東芝本体の債務超過の回避に使われる。要するに、赤字の補填に使われるわけだ。これは、はっきり言って法律違反である。

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