前向きに読み解く経済の裏側

2017年7月3日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 日本の景気を考える時、海外の景気は極めて重要です。日本の輸出はGDPの13%程度しかありませんが、日本経済は内需が弱いので、輸出が落ち込むと容易に国内景気が落ち込んでしまうのです。実際、リーマン・ショックは記憶にあたらしいですが、これに限らずバブル崩壊後の日本の景気後退の多くは海外景気の後退に起因するものでした。

 従って、日本の景気を見ている人々は、海外の景気にも関心を持っています。そこで不思議なのは、中国や欧州の景気に比べて、圧倒的に米国の景気に対する注目度が高いのです。ちなみに、日本の輸出に占める米国のウエイトは20%、中国(プラス香港)のウエイトは23%、EUのウエイトは11%です。なぜなのでしょうか?

日本の対米輸出は米国景気で大きく増減

(iStock)

 米国の景気が悪化して米国の消費者が節約をする時、中古の車を新車に買い換えるのは我慢しますが、故障した自動車の修理は我慢しません。修理工は米国内の米国人で、新車を売っているのは世界中の自動車メーカーです。従って、米国人が倹約をすると、米国人よりも外国人の方が失業しやすかったりします。

 米国人の中にも、自動車を買う人が少しはいますが、彼らは「高品質高価格」の日本車ではなく、「低品質低価格」のメキシコ車を買いますから、諸外国の中でも日本製品の輸出は落ち込みます。

日本の対中輸出等も米国景気の影響が大

 米国は、圧倒的に世界最大の輸入国です。米国の景気が悪化すると、世界中の国が対米輸出の減少により打撃を受けます。それにより世界経済が減速したりすれば、日本の対世界輸出が減少してしまいます。

 それだけではありません。米国が中国等から輸入している物の中には、日本製の部品や素材が大量に使われています。心臓部の部品や重要な素材は日本から輸入し、それ以外は中国国内で調達して製品を作って米国に輸出する、という中国企業が多いからです。

 米国の中国からの洋服の輸入が減ると、日本から中国への洋服製造機の輸出が減ります。これは結構ドラスチックな変化です。10台の洋服製造機が中国で洋服を作っていて、10年に1台ずつ壊れるので日本から輸入しているとします。中国の対米洋服輸出が1割減ると、中国内で必要な洋服製造機が9台になりますから、毎年1台ずつ日本から買っている機械を今年は買わずに済んでしまいます。対日輸入は10割減るのです。

米国が不況だとドル安円高に

 米国が不況になると、FRB(米国の中央銀行)が金融を緩和します。すると、ドル安円高になります。それは、日本人が米国債を買わなくなるからです。

 米国債を買うためには円をドルに替える必要があります。そうなると、為替差損を被る(ドル安円高になった時に保有しているドルに値下がり損が出る)リスクがあります。金利差が大きければ、「多少リスクはあっても、儲かりそうだから投資しよう」という投資家が大勢いますが、金利差が小さくなると「リスクを取ってまで米国債に投資したくない」と考える日本人投資家が増えてくるので、ドル買需要が減ってドル安円高になるのです。

 ドルは基軸通貨で、世界各国との貿易に使われているので、ドル安円高になると対米輸出のみならず対世界輸出が減ることになります。これは打撃です。

 なお、米ドルは世界の資金の貸し借りにも使われていますので、米国がインフレになると金融が引き締められて、借金国には負担となる場合があります。これが借金国の債務危機を招いたりすると、国際金融市場の混乱に伴って為替相場や株価が動く場合がありますので、米国のインフレには注意が必要です。

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