前向きに読み解く経済の裏側

2017年6月26日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 ゼロ成長は、普通の企業にとってはプラスでもマイナスでもありませんが、地銀(信用金庫、信用組合等を含む、以下同様)にはマイナスに作用します。ゼロ金利も同様です。今回は、地銀のビジネスがゼロ成長とゼロ金利で苦悩している理由について考えてみましょう。

 ちなみに、本稿は銀行が「預金で集めた資金を用いて貸出を行ない、利鞘で稼ぐビジネス」を念頭に置いています。メガバンクは、それ以外のビジネスも多方面で展開しているので、とりあえず今回は地銀について記したものです。

(iStock)

企業は成長しないと金が余る

 企業は、利益を稼いで配当し、残りは内部留保します。といっても現金を金庫に積んでおくわけではないので、これを銀行に返済します。これとは別に、減価償却分もキャッシュフロー上はプラスですから、銀行への融資返済に用いられます。

 企業の設備が老朽化すると、維持更新投資が行なわれますから、銀行からの借入が増えますが、企業規模が一定で維持更新投資だけを行なう場合には、減価償却に伴って返済された金額を再び借りるだけで充分ですから、利益の中から返済された分は、返済されたままです。

 成長している経済ならば、設備増強投資のための資金を企業が銀行から借りるので、銀行業界の融資残高は伸びて行くのですが、ゼロ成長経済だと、銀行業界の融資残高は減って行くのです。普通の会社は、ゼロ成長だと売上高も収入も利益も一定額で推移するのですが、地銀は違うのです。

金利を下げても貸出が増えない恐怖

 融資残高が伸びないだけならまだしも、減って行くのですから、じり貧です。それを避けるために、地銀は貸出金利を引き下げていますが、それが再び地銀の収益を圧迫しているのです。金利を下げてライバル銀行から客を奪って来ようと考えても、ライバル銀行も同じ事を考えて金利を下げますから、客を奪って来るのは至難の技です。

 では、全銀行が貸出金利を下げると、全銀行の融資残高が著増するでしょうか? それも期待できません。以前、牛丼チェーン各社が値下げ競争を繰り広げたことがあります。牛丼業界であれば、ラーメン業界から客が流れ込んで、牛丼業界全体の売上が増えると期待することもできますが、銀行業界にはライバル業界がほとんどありませんから、それは期待薄です。

 他業界から客を奪って来なくても、借金をして設備投資をする会社が増えてくれれば良いのですが、これも望み薄です。銀行にとって、貸出金利を0.1%下げるのは大変な決意がいります。何と言っても貸出約定平均金利が0.7%程度なのですから。しかし、企業としては、「銀行の金利が0.1%下がったから設備投資をしよう」などと考える筈がないでしょう。企業が設備投資を判断するための材料は他にも沢山あるのですから。

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