改善の鬼 山田日登志のムダに喝!
山田日登志 著
著者・山田日登志が各メディアの注目を集め、“工場再生請負人”と呼ばれるのには、それなりの理由がある。トステム、ソニー、NEC、キヤノン、スタンレー電気など大手企業はもちろん、中規模経営の工場にいたるまで、山田が現場を指導教育した後は、その業績がみるみる回復するのである。事実、一時期は山田が指導した会社ばかりが見事な復活を遂げ、それらの会社は「山田銘柄(めいがら)」とさえ言われたほどだ。
山田は師である故・大野耐一(たいいち)(元トヨタ自動車副社長)から、現場のムダを徹底的に取り除く、「トヨタ改善方式」を学んだ。いわゆる“ムダとり”と呼ばれるこの方法は、必要でなくなる作業やスペースを見抜き、その過程で生まれた労働力やスペースを、新製品製造などに有効活用するというものである。山田は現在までに、大野の教えを継承しつつも、そのコンサルティング手法を昇華させて、独自の手法として確立させている。
それにしても、同じトヨタ生産方式を元に、経営コンサルティングを行うコンサルタントは数多(あまた)いる。しかし、なぜか山田だけが成功するのだろうか。
それは、山田の指導法が、見事に現場のムダを取り去るだけではなく、働く人びとのヤル気を強く引き出すものだからである。ときに愛情ある叱咤を繰り返し、ときに笑顔で褒める。ムダとりを最終目標にしているのではなく、「自分で考える社員」を育てることを目指しているのだ。本書は、そうした“山田マジック”をあますところなく伝えるため、山田語録を収めるとともに、付された本文ではその意図するところを丁寧に解説したものである。山田が人生を賭けた「ムダとり」の真髄を、現場を預かる社員だけではなく、マネジメント層に必携の書。
<書籍データ>
◇B6判並製・147頁
◇定価:本体1,400円+税
◇2009年1月20日発売
◇ISBN: 978-4-86310-039-8
<著者プロフィール>
山田日登志(やまだ・ひとし)
PEC産業教育センター所長。一九三九年、岐阜県生まれ。経営コンサルタントを経て、七八年にPEC産業教育センターを設立。トヨタ生産方式の創始者である大野耐一氏と親交をかさね、独自の現場教育を開発する。トステム、ソニー、NEC、キヤノン、スタンレー電気、富士電機などの上場企業から中小企業まで現場の生産革新を推進し、各工場の業績をV字回復させ、高い評価を得ている。著書に『ムダとり―現場の変革、最強の経営』『[図解]ムダとり』(ともに幻冬舎)、『常識破りのものづくり』(共著・日本放送出版協会)、『改善魂を求めて トヨタ生産方式』(日刊工業新聞社)などがある。
はじめに
現代、世界の人々は便利さと欲望をできるだけ安い値段で得ることに汲々としています。
国際競争は、人のことを顧みることなく、ただひたすら自分の人生を、自分の思うままに行きたいと思う人を作ってしまいました。
分業化とコスト競争は、自分の作業に精を出すことでいっぱいで、他の職場の人も、隣に住む人にも関心を向けない人間を作ってしまいました。
その原因は、すべて日本人が生んだ規格大量生産からきているように思えます。(中略)
この社会に一喝を与えたものこそ、今日、話題を集めているトヨタ自動車が生んだと思える「トヨタ生産方式」と「カイゼン」です。
私は、この創始者・大野耐一先生に知遇を得、ムダを研究するようになりました。
それから三十余年、「徹底的なムダの廃除」は、製造現場を変え、働く人の気持ちを変え、創意と工夫を生むようになり、工場の業績も目に見えて向上し、「カイゼンの鬼」「工場再建請負人」と呼ばれるようになりました。
そんな私が、新幹線の雑誌「ウェッジ」に請われるままに書き綴ったのが、「ムダとりの山田さん 世の中に喝」でした。
皆さんのご批判を受けながら、より読みやすく、現代の私の気持ちも込めて、書き直したのが本書です。
世はまさに、アメリカのバブルがはじけ、世界の基軸がどうなるのか大変な時代です。しかし、自分を忘れず、ムダのない生活をし、組織と社会を守ろうとする人が一人でも多くなれば、平和な暮らしができると確信しています。(続きは本書でお読みください)
<目次>
はじめに
改善魂その1 ムダに気づく
1.ムダを見る眼
2.現場におけるムダ
3.知恵を出せ
4.川の流れのように
5.改善の本質
6.強い意志
7.間締め
8.管理の基準
9.必要なのは何か
10.現代の奴隷
改善魂その2 自分を変える
1.「わかった」と「やれる」は大違い
2.ものさしを持て
3.反復・くりかえしで体に刻め
4.鋼のような強い意志
5.逆算こそ勝利への近道
6.差別化が人を強くする
7.谷は深いほどよい
8.技は気で伝わる
9.良い仕事
10.人生、三万日の地球への旅
改善魂その3 会社を変える
1.経営とは人づくりである
2.経営とは価値を知ることである
3.ニンベンのつく「自働化」を目指せ
4.かなしき赤字会社
5.本当の気づかい
6.キビキビ、ハキハキでモラールアップ
7.現場の仕事は現場の人に
8.機会損失
9.何が売れるか
10.経営の結果が数字を生む
改善魂その4 社会を変える
1.大量生産、大量販売は安物買いと使い捨てを生んだ
2.モノづくりは現代の奴隷
3.価値を知り合う社会
4.限りある資源を大切に
5.共生の社会のために
付録 ムダとりの歌
※下記のサイトでこの本を購入することができます。