フェイクを見抜く

「危険」情報の読み解き方

唐木 英明:著 ,小島 正美:著
電子版あり
フェイクを見抜く
電子版あり
フェイクを見抜く
「危険」情報の読み解き方
唐木 英明:著 ,小島 正美:著

偽情報、誤情報、デマ、不正確な情報、偏った情報……。複雑化し、氾濫するフェイクを見抜くための実践講義!

定価:2,090円(税込み)
四六判並製 304ページ
発売日:2024年 1月19日
ISBN:978-4-86310-276-7
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◎科学とリスクにまつわるフェイクと闘い続けてきた著者による
ファクトチェックの実践講義!

――――――――――――――――――――――――――――――――
偽情報、誤情報、デマ、不正確な情報、偏った情報……
フェイクニュースは複雑化し、見破るのがどんどん難しくなっている。
日本でも少しずつファクトチェックの重要性が認識されつつあるが、
科学を装った誤情報の真偽の判定は非常に困難を極める。
世の中に氾濫するフェイクを見抜くためには、
どのようなものの見方を身につければよいのだろうか。
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<本書の目次>

第1章 フェイクニュースを作り出す手法
第2章 【無農薬・無添加・オーガニック】食のリスクをめぐるフェイクニュース
第3章 【遺伝子組み換え技術】一つの論文が世界に与えた衝撃
第4章 【除草剤グリホサート】フェイクニュース・ビジネスで大儲け
第5章 【ネオニコ系殺虫剤】メディアが好む危ない情報にどう対処するか
第6章 【BSE、中国産食品、新型コロナウイルス、子宮頸がんワクチン】記者のバイアスがニュースのバイアスを作る
第7章 【ゲノム編集、処理水】進むメディアの分断、記者はどこまで自由か
終章 まとめと提言


「はじめに」より
巷では玉石混交の情報が乱れ飛んでいる。そうした偽情報や誤情報、デマ、不正確な情報に対して、「正確」「不正確」「誤報」「虚偽」などと真偽を検証する「ファクトチェック」活動が日本でも活発になっている。しかし、あるニュースや記事、ネット情報に対して、簡単に「正確」とか「間違い」と判断するのは、実は意外に難しい。ニュースで流れた政治家の発言が事実かどうかを確認するという程度のことなら、それほど難しくはないだろう。現にそういう情報に対するファクトチェック活動は日本でも始まっている。
 ところが、「農薬のせいで子どもの発達障害が増えた」とか「非糖質系甘味料の摂取はがんを増やす」、また「妊婦が新型コロナワクチンを接種すると流産する」「ゲノム編集食品を食べるとがんになる」「有機食品は美容によい」といった「科学とリスク」に関わる話となると、専門的で学際的な科学知識が必要となるだけに、そう簡単に「誤報だ」などと断定することは難しい。最近は、科学を装った誤情報が多く出回っているだけに、真偽の判定は余計に困難を極めている。つまり、従来のファクトチェックでは手に負えない巧妙な偽情報や誤情報が増えているのがいまの時代である。
 さらに、同じニュースや記事でも、別の角度から見ると「これって、相当に偏っている」と思われる情報も増えてきている。例えば、福島第一原発の事故でたまり続けるタンクの処理水放出をめぐる問題でも、同じテーマを扱っていながら、新聞社やテレビでその報道の中身がかなり異なり、何が真実か分かりにくい例も増えている。この問題は、新聞やテレビなど媒体ごとに報道スタンスがはっきりと分かれる「メディアの分断」とも関係するため、新聞を読み比べても真相はなかなかつかめない。
 フェイクニュースをテーマにした数々の本でいつも書かれているように、インターネットの世界では恐怖や不安に訴える偽ニュースや都市伝説的な話ほど「速く」「広く」拡散する。それがここ20年間の特徴だった。
ところが、今や次の革新的技術である人工知能(AI)の爆発的な普及が進行している。これまでも本物と見分けがつかない偽動画や偽画像を作ることはできたが、それは専門家が専門技術と多額の費用をかけて作っていた。例えばスティーヴン・スピルバーグ監督の映画「ET」は1000万ドル、14億円の製作費をかけたと言われるが、現在は無料のAIソフトを使って簡単にETもどきの画像はもとより動画までも作ることができる。ということはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)による文字情報の時代からAIによる画像情報の時代に入ったということだ。
そしてその効果は驚くべきものだ。例えば、プラスチック製のストローは環境に悪いからやめようなどとSNSにいくら書き込んでも結果は出なかった。ところが世界中のプラスチック製ストローを激減させたのが、鼻孔にストローが刺さった1匹のウミガメの写真だった。文字情報以上に画像情報は感性に強く訴えかける。だから、正しい方向に使えば大きな効果がある。しかし、同時にフェイクニュースの手段としても文字情報とは比べ物にならないくらい強力だ。こうして「ディープフェイク」と呼ばれる識別が極めて困難なフェイクニュース画像が氾濫する時代がやってきた。偽画像と分かって面白がるだけなら大きな問題にはならないだろう。しかし偽画像を本物と勘違いして不安や怒りが生まれ、社会、経済、政治にまで大きな混乱をもたらす可能性は大きく、国際的にその対策の検討が始まっている。このような新しい事態に対処する方法を探ることもまた本書の大きな目的だ。
ではどうすればよいのか。本書は、従来のファクトチェック活動では手に負えない具体的な実例を挙げながら、フェイク情報への対処法を解説する。またメディアの言論空間の構図や生態も解説する。氾濫するフェイクニュースを解析する類似の本は何冊か出版されているが、日本や海外で実際に起きている具体的なニュースを挙げて、「これは○○の部分がおかしい」といった実践的な手引き本はほとんどなかった。そういう意味で本書は、事実または実像に近い真実を手に入れるための武器を提供するテキストブックである。氾濫する情報に溺れないための遊泳術を一緒に考えようという本である。(後略)


※内容は予告なく変更となる可能性がございます

 

著者プロフィール
唐木 英明 (からき ひであき)

農学博士、獣医師。1964年東京大学農学部獣医学科卒業。同大助手、助教授、テキサス大学ダラス医学研究所研究員を経て東京大学教授、アイソトープ総合センター長を併任、2003年名誉教授。倉敷芸術科学大学学長、日本学術会議副会長、公財)食の安全・安心財団理事長などを歴任。日本農学賞、瑞宝中綬章などを受賞。専門は薬理学、毒性学、食品安全。

小島 正美 (こじま まさみ)

1951年愛知県犬山市生まれ。愛知県立大学卒業後、毎日新聞社入社。松本支局を経て、東京本社生活報道部で食・健康・医療・環境問題を担当。2018年退職。東京理科大学・元非常勤講師。「食生活ジャーナリストの会」前代表。現在「食品安全情報ネットワーク」共同代表。著書として『海と魚たちの警告』(北斗出版)、『メディア・バイアスの正体を明かす』(エネルギーフォーラム)など多数。

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