世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年9月1日

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 パキスタンの著名なジャーナリストであるアーメッド・ラシッドが、7月30日付の英フィナンシャル・タイムズ紙で、最高裁判所によるシャリフ首相の追放に続き、今後、司法によって主要な政治家が一掃されることによって、パキスタンの政治は混乱に陥りかねないと述べています。論旨は以下の通りです。

(iStock.com/dricalAfanasia/Daria_Andrianova/Ylivdesign)

 ナワズ・シャリフは3度首相に選ばれたが、将来は如何なる政治ポストも不適格とされるに至った。最高裁判所がシャリフの腐敗を決定したことによってパキスタンは政治的混乱に陥る恐れがある。更に、軍が外交安全保障政策を掌握する立場にある。来年の総選挙までの暫定的な政府は弱体であるに違いなく、軍に対する邪魔立ては殆ど存在しないことになる。

 最高裁判所の決定により、シャリフは議会の議席を失い、腐敗容疑の更なる刑事裁判に直面する。事の発端はパナマ・ペーパーがシャリフ一族やその他のパキスタンの政治家が海外に保有する会社や資産を暴露したことにあった。

 腐敗容疑で刑事告訴されているのは、他に、シャリフの二人の息子、および娘とその配偶者である。彼の弟のシャバズ・シャリフ(現在、パンジャブ州首席大臣)に対する裁判も進行中である。最高裁判所はシャリフの親戚に当たる財務相も不適格とした。

 広範な混乱が待ち受けていよう。イムラン・カーン(元クリケット選手、「パキスタン正義運動」を率いる)、アシフ・アリ・ザルダリ(ベナジール・ブットー元首相の夫、「パキスタン人民党」総裁)を始め、多くの主要な政治家が腐敗や資金洗浄の廉で告訴されている。今後6ヶ月、裁判所は全ての主要な政治家が選挙に出られないようにするかも知れない。新人を迎え入れることは良いアイディアであるが、そのことがもたらす不確実性は経済の落ち込みや政治の動揺を招き得る。

 裕福な政治家が腐敗追及の圧力を遂に感じるようになったことに多くの中間層の有権者は喜んでいる。他方、腐敗が日常茶飯事の田舎の貧しい大多数の人々には殆ど何のインパクトもない。従って、シャリフに抗議する街頭行動も支持のための集会もないであろう。しかし、中間層の一部にはシャリフには任期を全うさせるか、あるいは選挙を前倒しすべきだったという強い気持ちが見られる。彼等は軍の政治へのあからさまな介入を怖れてもいる。

 パキスタンは、1947年の建国以来、政治的安定を経験したことがない。今や、司法は「アウゲイアス王の牛小屋」の清掃に手一杯の様子である。その仕事が裁判官に委ねられ、軍が自己の目的のために状況を利用しようとしないのであれば、長期的にはパキスタンにとって良いことかも知れない。

出典:Ahmed Rashid ‘Pakistan can survive the chaos of Nawaz Sharif’s ousting’
(Financial Times, July 30, 2017)
https://www.ft.com/content/6f2fc8f4-73a1-11e7-93ff-99f383b09ff9

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