定年バックパッカー海外放浪記

2017年8月13日

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高野凌 (たかの りょう)

定年バックパッカー

1953年生まれの62歳。横浜生まれ、神奈川県出身。大学卒業後は商社、メーカー勤務を経て2013年定年退職。2014年春から海外放浪生活を始める。放浪歴は地中海、韓国、インドシナ半島、インドネシア、サンチアゴ巡礼など。サラリーマン時代は主として海外業務に従事。ニューヨーク、テヘラン、北京にて海外駐在を経験。身長170センチ、57キロ。獅子座。A型。現在2人のご子息は独立し、夫人との2人暮らし。孫1人。

(2016.6.18.~9.14 89日間 総費用18万2000円〈航空券含む〉)

インド人の軍隊自慢 インド軍は世界最強?

 インド旅行を通じて印象に残ったのはインド人のインド軍自慢である。私の知り得る限り世界中でインド国軍ほど広く強く国民に支持されている軍隊はないように思う。

 現代インド社会について批判的な意見を述べるインテリでもインド国軍については肯定的評価であった。

中国国境の秘境湖パンゴンツァに通じる山岳軍用道路を急ぐ軍用トラック

 米国の軍事力分析会社Global Firepowerのランキングによるとインド軍は人員(正規軍132万人)では中国に次いで世界第2位、装備を含めた総合力では米国、ロシア、中国に次いで世界第4位となっている。

 しかしインド人が強調するのは想定される紛争地域での実戦力であり、実戦になれば中国人民解放軍やパキスタン軍には絶対に負けないと信じている。

海抜4800メートルのパキスタン国境。双眼鏡でインド国境防衛隊の塹壕や砲台が見える。冬季は氷雪に覆われる零下30度の世界で指呼の距離にあるパキスタン軍陣地と対峙

 印パ紛争では山岳地帯の攻防戦でインド軍は極寒の中で一週間食糧なしで自軍陣地を死守したとか、人民解放軍の突然の侵入にも関わらずインド国境警備部隊は十倍の敵を阻止したとか、インド人はそうした英雄伝説を熱く語るのである。

山岳軍用道路にある国営石油会社IOC(Indian Oil Corp)の標識「次の給油所まで365キロ」

世界最大の民主主義国家

 インドは人口大国である。2016年の統計では中国13億8200万人に対して、インドは13億900万人であり数年以内に中国を超える。インド人で英語を普通に話すような人たち(地方の貧困層の人々は大半が英語を解さない)は「インドは世界最大の民主主義国家である」というフレーズを自慢げに口にする。

 キナウル渓谷で知り合った医師ガーグ氏は「学校教育ではインド独立の歴史と独立後一貫して民主主義を堅持してきた史実をしっかりと教えています」とインド人の矜持の背景を教えてくれた。共産党独裁中国に対する敵愾心からも「世界最大の民主主義国家」という誇らしいキャッチフレーズが国民の間に浸透しているのであろう。

独立後70年間クーデターのない民主主義国家

 第二次世界大戦後アジア・アフリカの旧欧米植民地から多数の独立国家が誕生したが、クーデターが頻発し軍隊や独裁者により民主主義はしばしば放逐されてきた。

 インドは民族宗教対立を背景にしたリーダーの暗殺という悲劇は何度か経験したが、1947年の独立以降、70年間自由投票選挙による民主主義体制を堅持してきたのである。広大な国土、巨大な人口、多様な民族・宗教を考えると奇跡のように思われる。

 隣国のパキスタンでは首相は暗殺または国外追放されるか軍事クーデターで政権を追われ、独立以来選挙とクーデターの繰り返しであることを鑑みればインドとの対比が鮮明である。

インド軍が民主主義の守護者として支持される背景

 7月3日。インド北部ヒマーチャル・プラデーシュ州のサラハンで広大なリンゴ農園を経営する37歳の青年篤志家サンジーンと出会った。「独立後のインド軍は英国支配時代の英国式軍制を範とした。それゆえ独立後もインド軍人は伝統的な英国式文民統制(シビリアン・コントロール)を厳守した。それは独立後のインド士官学校(Military Academy )にも継承された。それゆえインド国軍は民主主義の守護者の立場を守ってきた」と彼は解説した。

リンゴ農園の当主サンジーン氏37歳。信念と使命感を持った好青年

 さらに「インドは多様な民族・宗教がありヒンズー教ではさらにカースト制度の下で複雑な階層に分かれている。しかし軍隊は志願制であり階級制度の下、実力次第で出世が可能だ。それゆえ貧しいが優秀な若者にとり魅力的な組織である。結果的に優秀な若者が集まることになった」とインド社会特有の背景を説明。

 「パキスタン・中国という危険な国家と国境を接しているゆえ国民が公正で強い軍を望んでいる。国民の絶対的支持があるから軍人も誇りを持ち規律が維持される」と彼は地政学的な観点も説明した。

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