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2017年8月28日

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ドナルド・トランプ米大統領は25日、法廷侮辱罪で有罪判決を受けていたアリゾナ州の元保安官ジョー・アルパイオ氏(85)に恩赦を与えた。アルパイオ氏の移民に対する強硬な姿勢は、物議を醸していた。

自称「全米一タフな保安官」のアルパイオ氏は、法律違反を犯していない移民の拘束を止めるよう指示する2011年の裁判所命令に背き、有罪判決を受けていた。

トランプ氏はアリゾナ州フィーニックスの支援者集会で恩赦を発表した。会場の外には大勢のトランプ氏に抗議する人たちも集まっていた。

アルパイオ氏は、2016年の大統領選でトランプ氏の選挙演説にしばしば登場した。

アルパイオ氏は特に早い段階からトランプ氏を支持していた一人。一方のトランプ氏は大統領当選前から、「法と秩序の候補者」を自認していた。

アルパイオ氏はラティーノ系不法移民を強硬な手法で取り締まるほか、不法移民の疑いのみを根拠にスペイン語話者を多数拘束し、全国的に有名になった。不法移民を取り締まる権限は、連邦捜査員に限られている。

共和党の保安官だったアルパイオ氏は、州法違反の疑いのない移民を拘束してはならないという2011年12月の裁判所命令に意図的に違反したため、今年7月末に法廷侮辱罪で有罪判決を受けた。量刑言い渡しは10月の予定で、禁錮6カ月の実刑判決を受ける可能性があった。

テント・シティー

アルパイオ氏はマサチューセッツ州スプリングフィールド出身。米軍を経て、警察官になった。

1993年に初めてマリコパ郡の保安官に当選し、その後5回再選されたものの、2016年11月に落選した。

マリコパ郡には人口400万人以上の州都フィーニックスがある。そのうち約30%はラティーノだ。

アルパイオ氏は1993年、不法移民を収容する屋外刑務所「テント・シティー」の建設で初めて大々的に知られるようになった。「犯罪にはタフ」に対処することを売りとしていた保安官は、屋外刑務所は過密状態の刑務所に対する、タフな解決策だと自賛していた。

アルパイオ氏は囚人たちにピンクの下着と靴下、そして昔ながらの白黒しま模様の囚人服を着せたことで知られた。受刑者たちはアリゾナ砂漠の酷暑の中、屋外で生活させられた。

保安官はさらに、チェーン・ギャング(囚人を鎖でつなぎ屋外作業をさせること)を復活させた。女性受刑者たちが、生活環境の改善と引き換えに自発的に参加する、チェーン・ギャングもあった。

アルパイオ氏に勝利し当選した民主党のポール・ペンゾーン新保安官は今年4月、フィーニックス市の屋外刑務所を閉鎖すると発表した。

法廷闘争

2007年には複数のラティーノ系住民が、保安官の部下たちがパトロール中の職務質問対象を人種で選別しているとして、アルパイオ氏に対し集団訴訟を起こした。

連邦地裁のマリー・スノウ判事は2011年、在留資格を根拠にした移民の拘束をアルパイオ氏に禁止する一時差し止め命令を下した。

さらに2013年、スノウ判事はアルパイオ氏率いる保安官事務所が、ヒスパニック住民を不当に職務質問の対象にしていると判断し、禁止命令を恒久的なものにした。

この裁判を機に、保安官は連邦当局の捜査対象となった。その結果、ヒスパニック系の受刑者がスペイン語を話したからと処罰したことを含め、複数の公民権侵害の疑いで、司法省がアルパイオ氏を訴追した。

アルパイオ氏はこの司法省の捜査を「魔女狩り」と表現。事件は2015年に和解が成立した。

早い段階からトランプ氏支持

アルパイオ氏はトランプ氏と共に、バラク・オバマ前大統領は米国出身ではないと主張し、その出生証明書の信ぴょう性を疑問視する運動の中心的存在だった。

2012年にアルパイオ氏がオバマ氏の市民権について「未解決事件を捜査組織」を作った際、トランプ氏はアルパイオ氏を大いに応援。ツイッターでも、「バラク・オバマの『出生証明書』は偽だと主張する未解決事件捜査を成功させた@RealSheriffJoe(アルパイオ氏のアカウント名)、おめでとう」と書いていた。

アルパイオ氏は2015年、共和党予備選挙の初期からトランプ氏の最も忠実な支持者として再び全国的な注目を集めた。

トランプ氏は移民に反対する保安官氏の主張を自ら繰り返し、移民取り締まりや移民政策改革の必要性について、アルパイオ氏と同じ意見を強調した。

保安官はトランプ陣営の集会の常連で、共和党全国党大会では登壇して演説する機会も与えられた。トランプ氏はその代わりにアルパイオ氏を保安官選挙で応援したが、2016年11月に落選し、7度目の選出はならなかった。

トランプ氏は22日のフィーニックス集会の前から、アルパイオ氏の恩赦を「真剣に検討している」と公言していた。今月半ばには、フォックスニュースに対し「アルパイオ氏は不法移民との戦いで色々がんばってくれた。米国にとって、素晴らしい愛国者だ。その人が、大変な目に遭うのは見ていられない」と話した。

(英語記事 Joe Arpaio: Life as 'America's toughest sheriff'

提供元:http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-41070353

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