2024年11月23日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年9月6日

 論説は、「サイバー攻撃は世界的に広がっているが、サイバー紛争をどう定義し、どう防ぐかについての国際合意はできそうにないので、各国が対策を講じるしかない」と言っています。その通りでしょう。サイバー攻撃は、実際の軍事力攻撃に比べて安上がりで、また攻撃者の特定が難しいということもあって、使われやすいという、厄介なものです。

 カタール紛争は、トランプが全面支持を表明したサウジがイニシアチブを取って始まったと思われましたが、UAEのカタールに対するハッキングが契機だったようです。もっとも、UAEはサウジと密接な連絡を取りながら工作を行ったものと考えられます。

 論説は、サイバー攻撃が軍事紛争に発展するのは時間の問題であると警告しています。これまでは実例が無いですが、あり得ることです。例えば、いくらロシアが米国の内政に干渉しようとしても、それが米ロ間の軍事紛争に発展することが考えられないように、大国間の間では考えられませんが、小国間ではあり得ます。

 論説のあげている例、すなわち弱い指導者の正統性に脅威を与えるようなサイバー攻撃に対する過剰反応は、実際に起こり得ることです。

 したがって、小国もサイバー攻撃をするようになって、世界がそれだけ安全でなくなっているというのは、単にサイバー攻撃が拡散するということに止まらず、サイバー攻撃が戦争に発展する恐れが高まるという意味でも正しいと言えます。

 サイバー攻撃と戦争の関係は、このような例に限りません。サイバー攻撃は、相手国の軍事ネットワーク、重要インフラへの攻撃など、全面戦争の重要な一部となり得ます。サイバー攻撃の真の脅威は、サイバー攻撃が戦争に発展する可能性よりも、こちらの方にあります。

  
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