使えない上司・使えない部下

2017年9月21日

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 今回は、書籍や雑誌などの編集制作をする編集プロダクション・エデュカの社長の竹下光彦さん(73歳)を取材した。早稲田大学教育学部英語英文学科を卒業後、研究社出版にて英語教育専門誌や視聴覚教材の編集長を務める。1975年、31歳のとき、エデュカを設立した。英語教材をはじめ、多くの教材、書籍、雑誌、DVDなどの編集制作にかかわる。一時期、経営危機に陥るが、それを乗り越え、現在に至る。今も小学生から社会人までに英語を教えるほか、英語力育成のための講演・コンサルティング活動を続ける。

社長の器以上に、中小企業は大きくはならない

(Hemera Technologies/iStock)

 「あいつは使えない」なんて言葉を使う人は、不遜だと思います。ある意味で、それは差別用語に近い。私は多いときで30人ほどの社員を雇っていましたが、そんな言葉を使ったことはありません。

 2002年ごろに会社(編集プロダクション・エデュカ)の経営状態が悪化したとき、優秀な社員から辞めていきました。ほかの会社の中途採用試験に早々と受かり、転職をするのです。残るのは、転職することができないような人たちでした。「仕事ができる」とは言い難い人です。

 仕事ができない社員しか残らないならば、私もそのレベルの社長だったのです。社長の器以上に、中小企業は大きくはならないのです。当時の私には、大きくしていくような人間力もなかったのでしょう。

 だけど、私は彼らを辞めさせることはしなかった。私の責任で採用したのですから、「辞めろ」とは言えない。経営状態が悪くなりながらいつまでも雇用をしていたら、会社は維持できない。今にして思うと、あの頃の私は経営者としては失格だったのかもしれません。

 最盛期の1990年ごろ、売上は3億円を超えていました。当時の編集プロダクションの中では、トップレベルです。楽しいと感じたことは、実はあまりなかった。毎月25日の給料の支払いに間にあわせるために、資金繰りには苦労しました。不安を抱え、胃が痛くなり、血の小便が出るような思いです。

借金で苦しんで、自ら死ぬなんてあまりにも惜しい

 最も苦しかったのは、手もとにお金がないために、家族や社員を守り、助けることができないこと。社員が懸命に仕事をしても、それにふさわしい報酬を与えることができないのです。自分のふがいなさに情けなくなる。罪の意識が、ますます強くなる。

 会社をなんとか維持し、賃金を払わないといけない。銀行をはじめ、いわゆる裏金融(闇金融)からもお金を借りました。裏金融は、利子が法外に高い。「借りなきゃいいのに…」と言う人も周囲にいましたが、それは中小企業の経営を知らない人のセリフですよ。無責任に経営を放りだすことはできないでしょう。社員や取引先などに、誰がお金を払うのですか? あの場合、私が借りるしかなかった。

 当時、裏金融は、期限までにお金を返済できないと、その筋の人が来るのです。怒鳴られたり、脅されたりしました。殴ってくれないかな、とひそかに願っていたものです。傷害罪で警察に訴えて、借金をチャラにすることができるかもしれません。しかし、向こうはプロですからそんなことはしなかった。

 返すために、違う裏金融から借りることもしました。責任があるから、会社をつぶすことはできない。社員たちを辞めさせることはできない。最も多いときは、負債は2億円近くになりました。それでも、10年で負債を4000万円にまで整理しました。

 お金を借りて給料を払う。それでも、社員が辞めていく。そのとき、裏切られたと思ったことはありません。創業したときに、こういう状況になるかもしれないことは、承知のうえでした。さびしい、とも思いませんでしたね。私は現在73歳ですが、経営者として現役ですよ。エデュカは、倒産はしていない。今は外部のスタッフなどを雇うスタイルにしましたから、給料の支払いで苦しむことはない。

 中小企業の社長が資金繰りで苦しみ、精神が病んでしまい、自殺をすることがあります。私は、その思いはわかるつもりです。心を落ち着かせ、冷静に考えてみると、借金の問題は生きていればなんとかなるものなのです。生きているだけで、60点。とりあえず、合格です。自ら死ぬなんて、あまりにも惜しい。

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