ちょいとお江戸の読み解き散歩 「ひととき」より

2017年10月24日

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牧野健太郎(読み解き) (まきの けんたろう)

ボストン美術館と共同制作した浮世絵デジタル化プロジェクト(特別協賛/第一興商)の日本側責任者。公益社団法人日本ユネスコ協会連盟評議委員・NHKプロモーション プロデューサー。浅草「アミューズミュージアム」にてお江戸にタイムスリップするような「浮世絵ナイト」が好評。

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近藤俊子(構成/文) (こんどう としこ)

編集者。元婦人画報社にて男性ファッション誌『メンズクラブ』、女性誌『婦人画報』の編集に携わる。現在は、雑誌、単行本、PRリリースなどにおいて、主にライフスタイル、カルチャーの分野に関わる。

[執筆記事]

 美しい髪形、なんとも品のあるお召し物、真っ白な腕に、どきっとする紅の唇……。弥勒菩薩(みろくぼさつ)さんのように頬杖ついた女性は、いったい何に思いを馳せているのでしょうか。

喜多川歌麿「歌撰戀之部 物思戀」 Photograph c 2017 Museum of Fine Arts, Boston. All Rights reserved. William S. and John T. Spaulding Collection, 1921 21_6415

お江戸のスーパー職人技

左(⑧)、右(①)

 美人を描いたらお江戸一、いや、三国一の名人といわれる浮世絵師・喜多川歌麿さん(⑧)の世界に名だたる美人画です。美しいのは「恋」をしている時とばかりに、顔をアップにして、状況を違えて描いたのが「歌撰戀之部(かせんこいのぶ)」のシリーズ、その代表作「物思戀(ものおもうこい)」(※1)は寛政5~6年(1793~94)の作品(①)。

 わたくし牧野は、このお方に一目惚れしてしまいました。1世紀近く眠っておられたボストン美術館の収蔵庫で彼女に会った瞬間に、ビビッと。何ともいえぬ気品があり、凛として、愛らしくて……そしてタイトルには「物思戀」。恋を思う、そう、Fall in Loveです。

 「なんと可愛い」と声に出したら、隣においでの高名にて博識なる師匠がひと言、「牧野さんは困った女性がお好きなのですね」と。曰く「彼女には眉が描かれていない(②)、ということは『人妻』。夫には恋はしない、すなわち『不倫なり』」と。「ムムッ!!」

※1 ほかに「深く忍戀(しのぶこい)」「夜毎に逢戀(あうこい)」「あらはるる戀」「稀ニ逢戀」がある。いずれも女性の恋心を描いた名品

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