人口約15万人の栃木県足利市が近年、映画やドラマのロケ地として人気を博している。映画『ちはやふる』や『64』、来年公開予定の『今夜、ロマンス劇場で』など、注目作品の撮影チームがひっきりなしにロケを行っている。その理由は「地の利」「町並み」「おもてなし」、この3つの言葉に集約できる。
映画やアニメの舞台になれば「聖地巡礼」などと呼ばれ、多くの観光客が訪れる。地方自治体の多くが、「フィルムコミッション(FC)」という担当を置き、映画撮影の誘致や、撮影支援を行なっている。まさに「群雄割拠」という状態のなかで、一歩抜きん出ているのが栃木県足利市。「足利」と、言われても足利尊氏、足利学校などは思い当たるが、「映画」とはつながらない。その足利がなぜ「映画」なのか。
「映像のまち推進課」の辺見課長によれば、きっかけは1990年代に放送されたNHK大河ドラマ『太平記』にあるそうだ。このドラマが放送されたことで、大挙して観光客が押し寄せた。しかし、オープンセットの公開が終了するとともに観光客の数も減少。太平記ブーム以降は、例年並みに落ち着いた。そこで、4年前に「映像のまち推進課」を設置し、新たな取り組みをはじめた。
台本を読み込むところから仕事が始まる
といっても、特別な予算を設けたり、映画関係者に営業をかけたりはしていないと言う。では、何をしているのか。徹底した「おもてなし」だ。基本的には「待ち」のスタイルで、ロケの相談があれば、即座に対応する。そして、担当課員は台本を熟読し、足利市内で可能なロケ場所を提案する。推進課の書棚にはこれまで足利で撮影された映画の台本がびっしりと並んでいる。
「推進課の方たちは、これまで数々の撮影をこなされてることもあり、イメージを伝えるだけでいつも的確なロケ地を提案してくれます。レスポンスが速いのもありがたい」。こう語るのは、制作会社フィルムメイカーズの宮崎慎也氏。さらに、「撮影のことを理解されていて、地域の方ともよくコミュニケーションを取られているのでトラブルも起きにくい。だから安心してお願いできるんです」と続けた。
こうした評判が撮影関係者の間で広まることで、また新たな撮影チームが呼び込まれる。平成28年度には、年間60作品もの撮影が足利市で行われるようになった。