解体 ロシア外交

2017年12月4日

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通信、輸送、観光面での新規支援

 第二に、ロシアが北朝鮮に通信・輸送・観光などの支援を新規に始めたことにも注目すべきだろう。

 北朝鮮の命綱の一つとなる貨客船「万景峰号」はかつて日本と北朝鮮を結んでいたが、2006年に日本が全面入港禁止にした経緯がある。だが、2017年5月にロシア極東のウラジオストクと北朝鮮北東部の羅先(ラソン)を結ぶ万景峰号の定期船航路がロシア企業インベスト・ストロイ・トレストの運営により新設されていた。米国の制裁を恐れてウラジオストクが港湾使用料を値上げしたため、8月下旬に休止したものの、10月初旬に「客は乗せずに貨物のみの不定期運航」という形ではあるが再開した。万景峰号の運航自体は北朝鮮制裁には抵触しないが、禁輸物資の輸出入の抜け穴になるのではないかと危険視されている。とはいえ、港湾使用料の合意ができていない上に、貨物だけでは定期運行は維持できず、また不定期運行ですら貨物量が確保できなければ再び休止に追い込まれる可能性も高い。

 また、8月末には、モスクワで北朝鮮政府の認可を受けた初の旅行代理店「NKOREAN」が開設された。北朝鮮への旅行を手配することを目的としているが、ロシア人向けのビザ発給に要する期間はこれまでの2~3週間から3~5日に短縮される。在露北朝鮮大使館は北朝鮮旅行の魅力と安全性を強くアピールしているというが、これもロシアと北朝鮮の関係強化を象徴している。

 さらに10月1日、北朝鮮は新たにロシアを通じたインターネット接続を確保した。それ以前は、北朝鮮のインターネット接続は、中国の国有通信会社・中国聯合網絡通信に依存してきたが、ロシアの大手通信事業会社トランステレコムも北朝鮮にインターネット接続サービスを開始したのだ。これにより、北朝鮮のサイバー攻撃能力は格段に向上したと見られており、諸外国は警戒感を強めている。

ロシアW杯アリーナ建設で奴隷労働

 第3に、ロシアと北朝鮮双方にとってメリットが大きいのが北朝鮮人の出稼ぎ労働者問題である。

 2015年の統計によれば、ロシアにいる北朝鮮労働者は4万7000人だが、この統計にはロシア人と結婚した者や亡命者は含まれず、また不法労働者も含まれないことから、相当数の北朝鮮労働者が存在していると推測される。なお、公式数字ですら、北朝鮮労働者の出稼ぎ先としてロシアが圧倒的に多いことがわかる(2位は中国の1万9千人)。そして、ロシアはさらに多くの北朝鮮労働移民を受け入れようとしている。3月22日には、ロシアと北朝鮮が平壌で労働移民に関する関係省庁の協議会を開催し、ロシアは北朝鮮労働移民の受け入れ拡大に関する中長期の計画を示した。

 極東開発をめざすロシアにとって、低賃金ながら勤勉で、質が高い仕事を早くこなし、休まず働く北朝鮮人の労働力は不可欠だとされている。加えて、最近では2018年のロシア・ワールドカップのためのゼニト・アリーナ(ガスプロム・アリーナ)の建設にも、多くの北朝鮮人労働者が投入されていることが報じられている。しかも、それら北朝鮮労働者は金網に囲まれた場所に設置された移送用コンテナで生活を強いられ、1日17時間労働で約10米ドルしか支払われていないケースすらあるとも報じられ(一般的な給料は月約5万ルーブル(約5万円)程度だとされているが、うち8割は北朝鮮に送金されるという)、奴隷労働として批判を浴びている 。これについてロシアの研究者は、北朝鮮政府が労働者をロシアの企業に売っているため、この奴隷労働に終わりはないと述べる。

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