国民を唖然とさせた発言『毛沢東の大長征に朝鮮青年も行動を共にした』
「受難」を「親交」と解釈する歪んだ歴史観
演説の中で最も話題になったのは、毛沢東の率いた大長征に朝鮮青年が行動を共にしたという部分だ。中国共産党には少なくない数の朝鮮人が参加し、多くの朝鮮人が日中戦争や国共内戦に人民解放軍として参加したことは事実だ。文大統領は、その事実を持ち出して、中国と韓国の「親密な関係」を表現しようとしたのだろう。
だが、韓国にとって重要なのは中国共産党に参加した朝鮮人たちの多くは、1950年に起きた朝鮮戦争に中国軍として参加し、韓国軍や米軍を中心とした国連軍に大きな打撃を与えた「敵軍」となったという事実だ。毛沢東と行動を共にした朝鮮人たちがいたということをアピールし親近感を示したかったかも知れないが、それは大韓民国を守るために中国軍と戦って命を落とした韓国軍犠牲者のことを完全に無視した話なのだ。
しかも、文大統領は、「中国共産党の同志」だと朝鮮人「金山(キム・サン1905-1938)」に言及したがこれも呆れた発言だ。金山が抗日運動家、また社会主義者として中国共産党に所属していたのは事実だ。だが彼は、毛沢東の片腕であり、後に文化大革命を主導した康生(1898-1975)により日本のスパイだという濡れ衣を着せられ処刑された。文大統領が「中国共産党の同志」と表現した朝鮮人は毛沢東と中国共産党によって命を落とした「被害者」なのである。こんな皮肉があるだろうか?
これ以外にも、明と朝鮮の初期を「両国が共に絢爛たる文化を開花させた代表的な時期」と表現した点も理解に苦しむ。「朝鮮」という国名自体が明の太祖に選んでもらった名前であり、その明の太祖は座る姿勢が悪いなどの難癖をつけて朝鮮王が送った使臣を半殺しにして送り返したような人物だ。明と朝鮮の初期とは、使臣を半殺しにされても抗議することすらもできない、絶対服従の姿勢でいるしかなかった時代である。あの時代が、両国が共に絢爛たる文化を開花させた時期と表現するとは……。
文大統領が夢見る両国関係はあの時代の関係だとでもいうのであろうか。
【訂正】12月27日
「中国共産党の同士」とありましたが、「同志」の誤りでした。訂正してお詫び申し上げます。
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