WEDGE REPORT

2017年12月25日

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崔 碩栄 (チェ・ソギョン)

ジャーナリスト

1972年韓国ソウル生まれ。韓国の大学で日本学を専攻し、1999年渡日。関東地方の国立大学で教育学修士号を取得。日本のミュージカル劇団、IT会社などで日韓の橋渡しをする業務に従事する。現在、フリーライターとして活動、日本に関する紹介記事を中心に雑誌などに寄稿。著書に『韓国人が書いた 韓国で行われている「反日教育」の実態』(彩図社刊)、『「反日モンスター」はこうして作られた-狂暴化する韓国人の心の中の怪物〈ケムル〉』(講談社刊)がある。

暴行を受けた記者を批判する文大統領の支持者たち
「なぜ記者たちは大統領を困らせるのか!」

 この事件について韓国国民の反応は二つに割れた。一つは怒りと失望だ。中国人警備員による記者暴行という非常識な行動、そして、中国政府の冷たい反応はあまりにも非礼だという「怒り」。また、中国政府に対し強く抗議できない韓国政府への「失望」の声が上がったのだ。

 ここまでは恐らく日本人の感覚から見ても想像できる範囲の反応だと思う。驚かされるのはもう一つの反応だ。文在寅大統領の熱狂的支持者たちは、暴行を受けた記者たちを非難し始めたのだ。

 面白いのは文在寅大統領の支持者たちが記者たちを非難する理由だ。それが「なぜ指示に従わなかったのか」ならまだ理解できるが、大統領の支持者たちが怒ったのは「首脳会談を前に記者たちが大統領に重荷となるような騒動を起こし、大統領の訪中に水を差した。文大統領に迷惑をかけた」というものだ。その批判の声がどれほど大きかったかは、暴行を受けた記者と同じ新聞社に勤務する同僚記者が自分のSNSに投稿したコメントを見てもうかがうことができる。

 (新聞社に)一日中鳴り続ける抗議の電話、「なぜ中国警備員に殴られるような行動をして文大統領を困らせるのか」「なぜ記者たちが我々の文大統領の偉大な中国訪問の評判を落とすようなことをするのか」…ひっきりなしにかかり続ける電話。本当に言葉を失ってしまう。本当に韓国国民なのか確かめてみたいくらいだ。(2017.12.16 暴行を受けた記者の同僚記者のSNSから)

 就任初期から文大統領の熱狂的な支持者たちが行ってきた過激な言動は、これまでにも韓国国内で問題視されることがあった(参考記事:「モンスター化する文在寅支持者たち、味方まで跪かせる『狂気』」)。

 海外に国賓訪問中の大統領を取材する自国の記者が暴行を受けたという事件において、大統領に迷惑をかけたという理由で非難する姿は、記者たちはもちろんのこと多くの国民を驚かせた。文大統領の支持者たちにとって最も重要なことは国家の威信や、国民の安全ではなく、少しでもそこに傷がついてはいけない「大統領文在寅の偉大さ」だということを示す出来事だということだ。

 だが、実は今回の訪中において韓国国民にもっと大きな衝撃を与えたのはこの事件ではなく、文大統領が北京大学を訪問し、学生と関係者300人を前で行った演説の内容だ。

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