中国はいま某国で

2011年3月7日

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谷口智彦 (たにぐち・ともひこ)

慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授

明治大学国際日本学部客員教授。2008年7月まで3年間外務省で外務副報道官。元日経ビジネス記者、編集委員、ロンドン外国プレス協会会長。著書に『同盟が消える日』(編訳、ウェッジ)など。(2013年1月末日現在)

 中国国家資本のカナダ進出は件数、金額とも近年とみに増えた。狙いはカナダの鉱物資源。中でもオイルサンドや鉱床ガスなど今後有望な資源の獲得を目指した動きが目立つ。

 中国石油化工(SINOPEC、以下「中国石化」)は2010年4月、カナダ企業シンクルード(Syncrude)の株式9.03%を、従前の保有者で米国石油大手・コノコフィリップスから約4400億円(46億5000万米ドル)という巨費を投じて買い取った。

 カナダでは是非に関し多少の議論が起きた。が結局同年6月、折柄開催のG20会議に出るため胡錦涛中国国家主席が来訪するのに合わせ、カナダ連邦政府は買収案件を正式に追認した。

米石油資本と組み
オイルサンドに足場

 カナダのアルバータ州には石油を含んだ土砂層、いわゆるオイルサンドが多量にある。シンクルードは同州オイルサンドから原油を取り出す大手で、その製品はカナダ・米国各地で精製の後、北米市場の消費者へ渡る。

 国有企業の中国石化は、これでオイルサンド事業に本格参入を果たしたのみではない。株を譲り受けたコノコフィリップスに加え、米エクソンモービルとの関係を深耕した。

 エクソンモービルはシンクルード株25%をもち、実地の採掘事業を担う。中国石化の資本参加と同時に、この米国を代表する石油会社が新社長としてシンクルードに送り込んだのが、中国本土で中国石化との合弁事業を直前まで経営していた人物(スコット・サリバン)だ。対中関係深化の表れと見ない方が不自然であろう。

 米国の専門誌「エナジー・コンパス」によれば、中国の国有石油会社と国富ファンドは05年以来西カナダの石油資源へ80億ドル近くを投じ、持ち分換算の石油採掘量は日量40万バレルに上る。日本が毎日使う石油の1割にやや欠けるが、相当の量だ。

 アルバータから西へ直線を引き太平洋と接する地のキティマットまで、パイプラインを引く話もある。地元企業が中国需要を狙い進めている計画で、開通すれば中国と往来する運搬船がキティマットに年間200隻以上出入りするとの予測がある。ただしこの予測を立てた環境保護団体フォレストエスィックスら、反対勢力は根強い。

 中国はカナダの鉱床が含むシェール・ガス採掘へも強い関心を寄せる。中国石油(CNPC)は、胡主席訪加と時期を合わせた昨年6月、カナダで同ガス採掘専門企業のエンカナ(Encana)と覚書を交わし、合弁へ向けた作業に入った。

 中国マネーは米国でとかくの疑念を呼ぶ。だが米国石油メジャーとの関係を抜き差しならぬものにしたし、北隣カナダではほぼ木戸御免の状態だ。土砂から油を抽出する、ガスを炭層から掘り出すといった事業は、長期契約を結び割高な費用を負う相手を必要とする。まさにその意味で、中国はカナダにとって好個の取引相手である。

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