Washington Files

2018年6月5日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。現在、神田外語グループ参与。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

(iStock.com/flySnow/Purestock)

 トランプ大統領が当初から、早期開催にいかにこだわっていたかを示すエピソードがいくつもある。

 まず最初は、金正恩朝鮮労働党委員長から出された首脳会談開催提案に対するトランプ大統領の「受諾」即断の経緯だ。

 去る3月8日、韓国大統領特使がホワイトハウスを訪問、首脳会談開催を希望する金委員長の意向をトランプ大統領に直接伝えた。大統領は、同席したジェームズ・マティス国防長官、ジョン・ケリー首席補佐官ら側近たちの慎重な姿勢を無視し、会談場所や会談内容など何の展望もないまま首脳会談の受け入れを即答した。たまたま外遊中のティラーソン国務長官もエチオピアで記者団に対し「米朝首脳会談への道のりはまだ遠い」と開催に否定的な見通しを表明したわずか数時間後だった。

 筆者は過去、日米首脳会談、米中首脳会談、冷戦時代の米ソ首脳会談など直接取材してきたが、今回のように、双方が何の準備もなしにいきなり「開催」発表にいたったケースは前代未聞だ。

金正恩の機先を制す?

(Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)

 第2は、5月24日「会談中止」にいったん踏み切った際と、その後の政権内の混乱がある。

 複数の米有力紙報道によると、大統領が突然「中止」を表明した背景には、直前に北朝鮮側から南北閣僚級会談の中止、ペンス副大統領やボルトン大統領補佐官に対する激しい批判など首脳会談に冷水を浴びせるような一連の動きがあったことから、金委員長の方から「首脳会談中止」を言い出しかねないと判断し、その前に体面を保つために自ら先に「中止」を急遽表明、北朝鮮をけん制するねらいがあったという。

 実際、大統領が「中止」を表明した際、ポンペオ国務長官、マティス国防長官らには何の相談もなかったばかりか、最初に米朝首脳会談の橋渡しをした文在寅韓国大統領に対しても事前連絡を怠るというあわてぶりだった。

 さらにその後、双方でいったん中止になった会談を復活させるための駆け引きがあり、板門店で首脳会談への具体的な準備会議が開かれた際にも、トランプ・ホワイトハウスは、米側には詰めの話を進めるための実務経験のあるベテランがいなかったため、オバマ前政権時代に北朝鮮担当の政府特別代表を務めていたソン・キム駐フィリピン大使を急遽派遣するというドタバタぶりだった。

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