中島恵の「中国最新トレンド事情」

2018年6月8日

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中島恵 (なかじま・けい)

ジャーナリスト

1967年山梨県生まれ。新聞記者を経てフリージャーナリスト。主な著書に『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』(ともに日本経済新聞出版社)、『爆買い後、彼らはどこに向かうのか?』(プレジデント社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』『中国人エリートは日本をめざす』(ともに中央公論新社)、『なぜ中国人は財布を持たないのか』(日本経済新聞出版社)、『中国人富裕層はなぜ「日本の老舗」が好きなのか』(プレジデント社)などがある。

今、中国の書店に足を運ぶと、目覚ましく洗練されてきたことに驚かされるが、中でも目を引くのは絵本コーナーの充実だ。中国に絵本を広めたのは、実は日本の出版社、ポプラ社だ。同社は2005年に中国初の絵本専門書店をオープンした。以来、中国の親子から厚い支持を受けるようになったが、同社は中国でどのように絵本を広め、中国人親子の心を掴んだのか。北京蒲蒲蘭(ププラン)文化発展で副総経理、上海・広州でも董事長兼総経理を務め、中国事業に長く携わる北村明氏にお話をうかがった。

北京蒲蒲蘭の店内。子どもだけでなく大人もワクワクするような設計が魅力的(写真提供:ポプラ社)

――そもそも、御社が中国事業に乗り出すきっかけは何だったのでしょうか?

北村氏:1995年に弊社の前々代表である坂井宏先が中国を訪れたとき、絵本がほとんどないという現実を見て驚き、この国に絵本文化を広めようと思ったことからでした。2000年に北京事務所を開き、04年に現地法人を設立。その後、上海、広州にも事務所を開き、現在に至っています。

 弊社には日本で児童書出版社としての長年の経験とノウハウがありましたので、何とか中国の子どもたちに優れた絵本を届け、中国で絵本文化を育成できたらという思いから中国で絵本事業を推進してきました。中国で書店のライセンスを持っている外資系企業は、今のところ弊社だけです。

――中国には「絵本」がなかった、ということに驚きました。

北村氏:「図画書」や「少児書」と呼ばれる子ども向けの本はあったのですが、どちらかというとお勉強もの、啓蒙的な内容が多く、また、絵は挿絵的な要素が強く、日本人が想像するような自由な「絵本」は存在しなかったといっていいと思います。「絵本」という言葉は今、ようやく中国に浸透するようになってきたのですが、これは日本語の「絵本」から “中国語になった言葉”だと思っています。  

――そうなんですね。北京に絵本専門書店を開いたとのことですが、具体的にはどのような事業を行っているのでしょうか?

北村氏:主に2つの柱があります。1つは書店経営と卸し販売事業です。05年に北京に絵本専門書店を開いて以降、上海にも書店を開き、実際に親子が絵本を自分の手で取って読めるショールーム的な場を提供してきました。北京は中心部の建外SOHO地区にあり、近隣に住む親子が通ってきています。上海は上海高島屋の店内に出店しています。どちらの店舗でも絵本の読み聞かせ会などの読者向けイベントを行っています。卸し販売事業は現地の書店や図書取次企業などへの卸し販売です。

上海蒲蒲蘭。百貨店の中にあり、親子で行きやすい(写真提供:ポプラ社)

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