英国は、7月12日に発表したEU離脱後の英国とEUとの関係についての白書('The future relationship between the United Kingdom and the European Union')において、「包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP、いわゆるTPP11)」への参加の検討を明記した。これを受け、英国際貿易省は7月22日から10月26日までの予定で、インターネット上で一般国民向けの意見公募も開始している。同省は、EU離脱が完了する2019年3月29日以降、CPTPP参加についての可能な交渉をする用意がある、としている。
英国際貿易省は、英国がCPTPPに参加することの意義について、以下の諸点を挙げている(‘Liam Fox launches consultations on UK's trading future outside of EU’, July 23, 2018)。
・英国がCPTPPに参加すれば、参加国中2番目の経済大国となる。CPTPPの世界のGDPに占める割合は17%に拡大する(注:現在は13~14%)。
・CPTPPは、カナダ、日本、シンガポールを含む11か国の、非関税障壁に加え関税の95%を撤廃するものである。
・CPTPPの現行の11加盟国が英国との貿易で占める割合は820億ポンド(2016年)に達し、オランダ、フランス、中国よりも多い。現行の11加盟国は、多様で、世界経済の成長の駆動力となっている地域に広がっている。
これらの指摘は、いずれも尤もである。TPPは、ハイレベルな貿易自由化、貿易・投資等のルール確立を目指している。米国の離脱は、極めて大きな痛手であったが。英国のGDPは2016年に約2.6兆ドル、米国は同じく約18.6兆ドルであり、英国が米国の代わりになり得るというわけではないが、CPTPPがカバーするGDPが少しでも増えることはCPTPPの影響力拡大に繋がるし、西側の経済規模の大きな先進国である英国が参加するとなれば、CPTPPが目指すハイレベルな貿易自由化にとってプラスとなろう。
さらに、米国の将来的なTPP復帰への刺激ともなり得る。こうしたことから、CPTPPの現行加盟国、そして、もちろん日本にとって、英国のCPTPPへの参加検討表明は歓迎すべきことである。菅官房長官は7月19日の記者会見で「英国のTPP参加を歓迎する」と述べているし、リアム・フォックス国際貿易相が7月末から8月初めにかけて来日した際には、茂木経済再生担当相、安倍総理も支持を表明した。フォックス国際貿易相は「安倍総理から、これ以上ないほどの素晴らしい支持を得た」と言っている。