世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年1月22日

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 12月19日、トランプ米大統領は突如「30日以内にシリアから米軍を撤退させる」と発表し、これに抗議したマティス国防長官(当時)が更迭された他、ボルトン安全保障担当補佐官も反対した。決定は、トルコのエルドアン大統領との電話会談で、トランプが「ISの撲滅をエルドアンに任せる」ということで独断で決めてしまったものと言われている。その際、撤退には条件は特に付けられなかった。その後、米国内外で反対が強まった。米議会では党派を超えて疑念が出された。共和党の有力者グラハム上院議員も反対したが、これはトランプにとり痛手だっただろう。

(gemenacom/BrianAJackson/GA161076/iStock)

 その後、軌道修正の動きが進んでいる。それを取り纏めているのがボルトンで、トランプもそれを受け入れているようである。ボルトンは、米軍の撤退に条件を付けた。それにより、米軍の撤退は数か月あるいは数年先のことになるかもしれない。ボルトンの言う撤退の条件とは、(1)ISが完全に撲滅されること、(2)トルコがクルド部隊を攻撃しないと保証すること、更に加えれば(3)イランが撤退すること、である。なかなかハードルの高い条件である。これらの条件の成否の鍵を握るのはトルコである。米国とトルコとの協議は年末頃から行われているようだが、詳細は分からない。エルドアンは1月7日付ニューヨーク・タイムズ紙に‘Trump Is Right on Syria. Turkey Can Get the Job Done.’(トランプのシリア決定は正しい、トルコは対処できる)と題する記事を寄稿、米軍撤退後トルコが役割を果たすことが出来る、と主張している。

 トランプのシリアからの米軍撤退決定を巡る混乱は、エルドアンが1月8日トルコ訪問中のボルトンとの会談を拒否、クルドを攻撃しないことの保証を求めたボルトンの発言を「受け入れ不可能」と激しく批判したことで、一層拡大している。エルドアンは、シリア作戦準備は完了していると脅迫しつつ、トランプとトップ同士でまとめた合意を側近達が勝手に理解しようとしているとも批判した。トランプとのトップ会談では米軍の無条件撤退であったのに、側近がそれに条件を付けるのは認められない、という理屈で反撃しているわけである。トランプのトップ外交の危うさが鮮明になっている。

 トランプの12月19日の決定につき政権内でダメージ・コントロールが行われていること自体は良いことである。しかし、上記の通り米とトルコの話し合いはすんなり行くようには思えない。トルコはクルドの攻撃を最重視しているからである。また、トルコが米国のIS撲滅作戦を肩代わりすることは不可能である。

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