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2019年2月7日

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デイヴィッド・シュクマン、BBC科学編集長(ブラジル・ブルマジーニョ)

ブラジル南東部ミナスジェライス州で1月25日に鉱山用のダムが決壊して以降、毎日のように新しい疑惑が持ち上がっている。

救助隊がブルマジーニョ近郊で遺体の捜索を続ける中、検察当局は鉱山を保有する資源開発大手ヴァーレを捜査し、危険性や時期について知っていたかを調べている。

これまでに確認された死者は121人、行方不明者は226人に上っている。

惨事から1週間がたち、主張と反論の嵐が吹き荒れている。事態を把握するために、いくつかの疑問点を整理してみよう。

問題のダムの検査頻度は

ヴァーレによると、ダムではドイツの契約業者によって「独立した外部検査が行われていた」という。

ダムの検査は2週間に1回で、直近では昨年のクリスマス直前に行われた。検査結果はブラジルの全国鉱業局に報告されていた。

また、1月には2件の「構造検査」が行われていたという。

これは一見、権威のある検査のように思えるが、実際にどのような検査だったのか、そして何より、どれほど総合的な検査だったのか、正確なことは明らかになっていない。

ここからさらに、鉱山検査の仕組みそのものについても問題が持ち上がった。ヴァーレの声明では、検査については鉱業局に「報告していた」とあるが、鉱業局が検査していたとは書かれていない。

ブラジルでは鉱山運営会社が検査に出資していることが、検査体制の欠陥だと批判する声もある。

また、ブラジル全土に800カ所ある鉱山用ダムの検査結果を検証する政府職員の数は非常に少なく、適切な機器や車両さえない状態のことが多いという指摘も出ている。

警報システムはあったのでは

ヴァーレはダムに監視カメラを設置していたほか、下流の居住地域にはサイレン網を敷いていた。

しかし、こうしたシステムが最も必要だった当日、警報システムは作動しなかった。

家屋15軒が泥に埋もれてしまった村の住民マリオ・フォンテスさんによると、自宅に一番近いサイレンは丘の上にあった。大量の鉱山廃棄物が迫っても、サイレンのわずか数メートル先を通過しても、サイレンはうんともすんとも言わなかったという。

ヴァーレの説明では、警報システムは自動で作動するものではなく、緊急センターから手動で動かすものだという。そして、今回の決壊では事態の進行があまりに速く、作動させられなかったと認めた。

緊急センターは鉱山地帯の外に設置されている。重要施設はいかなるダム事故からも安全な位置に置いておこうとしたのかもしれない。

つまり、緊急センターの設置場所はあまり助けにならなかったということだ。予測していなかった方向から流れてきた鉱山廃棄物によって、緊急センターも覆われてしまった。

地元メディアではこのほか、緊急センターで働いているはずの従業員2人がこの日は鉱山で働いており、緊急センターへ戻る前に決壊で亡くなってしまったという説明もされている。

どちらにせよ、下流に住む人々は誰も、自分たちに何が迫っているのか知るすべがなかった。

ヴァーレはダム決壊の危険性を評価していたのか

答えは「イエス」だ。ヴァーレは昨年、ダム下流地域の地形について詳細な分析を行うため、専門家調査団を雇っていた。

マリオ・フォンテスさんは、専門家が彼の家に来て「地理参照」と呼ばれる調査を行い、色々な場所で標高を測っていた際の様子を話してくれた。

自分や他の住民の家についてもデータを集め、建築様式や不動産としての価値を聞かれたという。

フォンテスさんは、これはダムが決壊した際の被害分析だろうと疑ったが、詳細は教えられなかった。

この調査についてその後、何か情報提供はあったのだろうか。ヴァーレは誰が危険にさらされているか、その結論を住民と共有したのだろうか。

「何もなかった」とフォンテスさんは教えてくれた。

「警告も訓練も一度もなかった。私たちがこういう危険にさらされているという情報も一切なかった」

ヴァーレは、「ダムが決壊したという仮定的状況に基づいた技術研究」を土台に、緊急時対応計画を策定していたことを認めている。

ブラジルではこうした計画を作ることが法律で定められているが、なぜ去年まで行われていなかったのかは明らかになっていない。

計画は恐らく、コンピューターで泥が流れる様子をシミュレーションし、どの地域が最も危険性が高いかを特定するものだっただろう。

しかしその結果を示した地図は公にはなっていない。多くのジャーナリストに混じって私も入手を試みているが、今のところ成功していない。

ヴァーレは、ここブルマジーニョの市役所を含む地元の自治体と計画を共有したと離している。では、自治体の反応はどうだったのか?

ブルマジーニョのアヴィマル・バルセロス市長は、ヴァーレの計画は「非常に簡潔なもの」で、同社はブックレットや地元住民への訓練を提供すべきだったと話している。

今後どうなる?

徐々に全体像が明らかになっているものの、全てが解明されるには数カ月かかるだろう。

すでに、ヴァーレ関係者が少しずつメディアに口を開くようになってきた。これは、雇用や収入をヴァーレに大きく依存しているコミュニティーとしては大きな前進だ。

現時点では、何百もの家族が悲しみに沈んでおり、多くの人が怒っていると話している。

鉱山で義父を亡くしたエリウ・カマラ・デ・シケイラ・ジュニオルさんは、「たくさんの夢が泥に埋もれてしまった」と話した。

「ヴァーレで仕事をすることを楽しみにしていた若者の夢も、定年退職して田舎で暮らすことを心待ちにしていた大人の夢も、全て今は泥の下だ」

(英語記事 Brazil dam collapse: The crucial questions

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-47153710

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